2018年 初秋 北海道 帯広


北海道のアメマス釣りは年々厳しくなってきている。魚の遡上数が年々減少していて、段々釣りの対象にならないほどの数になっているようだ。かつては鮭の遡上に合わせて海から夥しい数のアメマスが遡上してきていたが、鮭が遡上している川でもその姿を見ることは難しくなっている。
ガイドの中村さんの提案で、今年は最初から虹鱒狙いで北海道に釣りにやってきた。

10月19日 金曜日 晴れ

武蔵小金井駅から4時50分発の京王バスのシャトル便で羽田空港に向かった。小金井では数人の乗客しかいなかったが、調布駅では大勢の人が乗り込んで、ほぼ満席のバスは1時間ほどで羽田空港第2ターミナルに到着した。羽田発7時5分のANA4761便は、十勝帯広空港に定刻より10分ほど遅れて8時50分に到着した。到着ロビーでガイドの中村さんと一年ぶりに再会をする。釣り道具などで膨らんだ大きなバッグを車に積み込んで、早速釣り場へと向かった。帯広の周辺には大河川の十勝川とその支流の札内川や猿別川、利別川などたくさんの川が流れている。その中から特にここはという支流に入ることになった。


今回も6番のロッドに5番のフライリール、インジケーターを付けたリーダーには2Xのティペットを結んだ。フライは定番のエッグフライで、アウトリガーとして3Bと2Bのオモリを2個つける。流れや水深に応じてさらに2Bを足したりしながら、ポイントにフライを流していく。


6番のラインにオモリをいくつもをつけたキャスティングは1年ぶりなので、最初のうちはなかなか思うように扱うことができない。水流がある上に流れが複雑で、メンディングもうまくできない。上手にフライを流すことができないまま、悪戦苦闘の時間が過ぎる。やっと目印に反応が出ても合わせが遅いので、なかなか針掛かりしない。釣果のないまま1時間余りが過ぎた頃、ようやく待望の一尾がやってきた。


慎重にラインをたぐりながら寄せてくる。虹鱒は最後まで抵抗するので油断できない。最初の引きでそれほど大きくないことは分かっていたが、大きな川で育った魚だけにぐいぐいと引き続ける。近くまで寄せてくると、30センチを少し超えたくらいの虹鱒だった。体高があって丸々と太っていた。釣れたことに感謝し、針を外して流れに戻した。


この後は暫くアタリが遠ざかる。アタリがなかなか来ないと緊張がくずれ、いざアタリが来ても合わせが遅れてしまう。暫くしてインジケーターに反応があったのですかさず合わせてみたが、合わせが遅くて針掛かりが浅くなり良型を逃がしてしまった。逃がした魚は大きいと言うが、ラインをぐんぐん引いて深みに逃げようとした強烈な引きを考えるとかなりの大物だったようだ。その後、再び同じようなことがあり、貴重なチャンスを2度も逃してしまった。



この川にはかなりの鮭が遡上していて、河原のあちらこちらに死骸があった。また瀬脇の流れの緩い所を遡上していく鮭の姿も多数見られた。これだけ鮭がいれば虹鱒がもっと活性化していても良さそうなものだが、そううまくはいかないようだ。


一日遊んだ後は定番の温泉だ。この日の温泉は音更町にある十勝川温泉笹井ホテルの温泉で、ここは宿泊客だけでなく日帰り利用も受け付けている。隣接のラーメン店で食事と温泉のセット券を購入すると、美味しいつけ麺と温泉が1200円で堪能できる。つけ麺を頂いた後で温泉にはいった。少し濁りの入ったアルカリ泉で、心身ともにリラックスすることができた。

10月20日 土曜日 晴れ

昨夜は道の駅「ピア21しほろ」に車を止めて、トレーラーで1泊した。北海道は道の駅が充実していて、道内にはたくさんの道の駅がある。十勝地方だけでも14もの道の駅があり、それぞれ地域の特色を出して充実している。夏には道内はもとより、全国からキャンピングカーが押し寄せて、広い駐車場が満杯になるそうだ。


朝6時に起床し、中村さんに用意してもらった朝食を頂く。早く川に行っても、水温が冷たいので魚の活性は低い。ゆっくり食事をしてからでも、十分に間に合う。容れてもらったコーヒーをすすりながら、今日はどんな釣りになるか思いをはせる。


今日は昨日とは別の北にある支流に入る。北海道の場合、支流と行っても規模が大きく、水が多くて流れも速い。身支度をしっかり整えてから川に入る。幸運なことに昨日に引き続き今日も寒くはないので、防寒着を着る必要は全くない。身軽に動くことができる。


水温は7度くらいで、北海道の魚といえどかなり冷たいらしく魚の活性はあまり期待できない。暫くアタリのないままキャストを続ける。中村さんが一生懸命釣れる場所を探してくれているのだが、魚の動きはかなり鈍いようだった。



流れの手前、流心、向こう側と順々にフライを流していくのだが、反応は芳しくない。そんななかでやがてインジケーターが動きを止めて、僅かだが引かれるのを見る。すかさず合わせると、力強い引きが返ってきた。待望のアタリだった。慌てずラインを慎重にたぐり寄せてくる。果たして上がってきたのは、尺に少し足りない虹鱒だった。



また暫くアタリが途絶える。虹鱒は群れでいることは少ないので、釣り場の移動は必須だ。何回か瀬を渡りながら、釣り上がったり釣り下がったりと良いポイントを求めて移動を繰り返す。アメマスは群れにぶつかるとそこで暫く釣りができるのだが、虹鱒は足が勝負だ。時には強い流れに抗して遡行を続けなくてはならない。


北海道の釣りというと、どこでも大物が釣れるというイメージを持っている人が多いと思う。確かにそういう過去もあったが、それは昔話になりつつある。今年の9月には大型台風が2度も北海道に来ており、川の様相は大きく変貌していた。特にアメマスなどの遡上魚の場合はこうした気候や川の変化に敏感で、遡上をやめてしまうということもあるようだ。虹鱒は遡上魚ではないが、川の度重なる増水で 住みかを大きく変えているのではないだろうか。


良いポイントを求めて移動しているうちに、やがてインジケーターに反応が出始める。尺に満たないものばかりだが、引きは小気味よく力強い。ラインを慎重にたぐり寄せる。


フライを底近く流すために、オモリは3B一つに,2Bを3つから4つくらいつける。これでも流心の底を流すのは難しく、ラインを送り出しながらドラグがかからないように流していく。うまく流れに乗せないと魚に警戒心を持たれてしまい、食いを誘うことはできない。しかし、このテクニックを身につけるのは容易ではない。また、北海道には全国から釣り人がやってくるので、魚へのプレッシャーはかなり大きい。河原にはたくさんの足跡が残っている。そのため、枝が被さってキャストできないような竿抜けの場所を狙っていかないと釣果は稼げない。なかなか厳しいものだ。


そんななかでも中村さんのおかげで、どうにか釣果を上げることができた。エッグフライを使ったり、マラブーを使ったりと手を変え品を変えて釣果を引き出す。今回もビーズを持参していたが、それを使うゆとりがなかった。


川はかなり減水しているとのことだったが、北海道の川の水はとても質感があって上流への遡行は体力が必要だ。幸い比較的下流部なので底石は丸まっているものが多く、渓流を遡行するときのように岩が足に引っかかるようなことはほとんどない。それでも転倒は命取りになるので、遡行には注意が必要だ。


終わり近くになって、また一尾釣れた。インジケーターがすっと止まると同時に合わせをくれる。途端に強い引きが返ってくるので、ラインを左手で押さえながら少しずつたぐり寄せる。針掛かりがしっかりしていれば逃がすことはない。少しずつ少しずつ寄せてくる。尺には満たないが元気の良い虹鱒だった。


一日の釣りを終えて今夜の温泉は上士幌町の「ふれあいプラザ浴場」だ。300円の利用料を払って風呂に入る。ここは町営の入浴施設で、子育てや介護、福祉などとの複合施設になっている。おかげで安価な料金で温泉が楽しめる。

10月21日 日曜日 晴れ

朝の気温は2度くらいで暖かかった。今回の釣行は雨に降られることもなく、天気に恵まれたのが何よりだった。雨に降られれば気温は一気に下がり、釣りへの意欲が吹き飛ばされてしまうからだ。手がかじかんでのフライの交換は辛い。今日は昨日の川の上流に入る。その後、一気に下流に戻り大物を狙うという計画だ。大物は下流に多いらしい。


3日目になるとキャスティングにかなり慣れてきた。どうにか自分のイメージに近いキャスティングができてきている。しかし魚の反応は渋く、なかなかアタリは来ない。それでも北海道の大自然のなかでキャスティングができるのは嬉しい。次にこの空気に触れられるのは一年先になるので、肺に行き渡るように深く呼吸をした。



インジケーターの動きを注意深く見ているが、深場や流れの速い所ではアタリを取ることは容易ではない。インジケーターが水中にはいったまま流れることもあるからだ。それでも目をこらして見ていると、スーッと動いたりスッと止まったりする。見たと同時にラインを引いて合わせる。合わせが遅れれば針掛かりしないし、掛かっても浅くなってすぐにバレてしまう。そんな苦労を乗り越えて釣った一尾は大型ではなくても嬉しい。


午後から下流に移動した。数は少ないが掛かれば大物だと中村さんが言っていた。30センチ前後は何尾か釣っていたので、ここは一つ40センチオーバーを釣りたいものだと思った。30センチと40センチでは全く別物で、40センチの引きは格別だ。一昨年以来毎回40センチオーバーを釣っていたので、有終の美を飾りたいものだ。



しかし、現実はなかなかうまくいかないものだ。水量があり深みも申し分のない場所でも、魚からの反応はなかった。本当にどこに行ったしまったのかと不思議になる。あい変わらず水温は低いままだったが、全然アタらないというのもおかしなものだ。でも、相手が自然ではどうにもならない。またご機嫌の良いときに出直すしかなさそうだ。


午後4時納竿となった。厳しい状況ではあったものの、中村さんの努力でどうにか釣果を上げることができた。大物との遭遇はかなわなかったが、これは来年に持ち越すしかない。天気に恵まれた中で北海道の自然と戯れることができたのが何よりだった。感謝。感謝。感謝。


この後、帯広駅前のホテルまで送ってもらい、中村さんとそこでお別れした。その日は駅前のホテルに泊まり、厚岸の生牡蠣や豚丼を堪能することができた。翌日の朝、バスで十勝帯広空港に向かい、9時55分発の羽田行きJAL570便で東京に帰る。来年はどんな釣りが待っているのだろうか。

北海道の釣りに戻る