2016年 初秋 北海道 釧路


川の釣りの最後は11月の北海道釣行で締めくくるのが恒例になっていたが、今年は10月に出かけてきた。齢を重ねるにつれて寒さが身にしみるようになってきたのが最大の理由だったが、今回の釣行はこれが幸いして予期せぬ大物との出合いが待っていた。例年の主なターゲットはアメマスだったが、今回はレインボートラウトがターゲットになった。これは晩夏から初秋にかけて北海道を襲った台風や大雨の影響なのだが、被災された方々には大変申し訳ないが釣り人にとっては千載一遇のチャンスを与えてくれたようだ。寒さも思ったほどではなく、快適な北海道の釣りを楽しむことができた。

10月28日 金曜日 曇り

自宅を午前5時前に出て、武蔵小金井駅から京王バスのシャトル便で羽田空港に向かう。バスは1時間15分ほどで第二ターミナルに到着した。航空会社に荷物を預けて、空弁を買って朝食を済ませる。今年も羽田発7時45分ANA4771便で釧路に向かう。機内は観光客や出張のサラリーマン、若干のハンターや釣り人でほぼ満席だった。

釧路空港には予定時刻通りの9時20分に到着した。到着ロビーでガイドの中村夫妻と一年ぶりの再会をする。釣り道具などで膨らんだ大きなバッグを車に積み込んで、早速釣り場へと向った。今年はアメマスが不調なので、虹鱒狙いで十勝川の支流に入ることになっていた。遡上魚は海での漁船の操業や河口に設置された鮭捕獲用の網の影響をもろに受けている。大型のアメマスはかなりの部分が網で捕獲されてしまい,リリースされればよいのだがほとんどはリリースされずに加工場で動物の餌にされてしまう。その結果、川に上ってくるのは網の目を逃れた小型の魚が中心になってしまうのだ。

今回入る支流にも河口に網が設置されていたが、晩夏から初秋にかけての大増水を避けるために網が撤去されていた。その結果、その間にたくさんの鮭が遡上することができ、その卵を狙って虹鱒がとても活性化していた。この支流には元々レインボーはいるのだが、普段釣れる数は少ないとのことだ。それが鮭のおかげで十分な栄養を摂ることができて元気に釣り人のフライを追っているらしい。高速道路で1時間余り走り、支流近くの道路脇の駐車帯に車を止める。ここでトレーラーを切り離し、昼食を摂ってから支流へと向かった。


最初に入ろうとしたところには既に先行者がいたので、少し上流に移動して入り直す。川の手前の空き地に車を止めて、早速釣り支度を整える。北海道の釣りは年に一回だけなので、いつも新鮮な気持ちで、というより初心者の域をなかなか脱することができない。6番ロッドにアウトリガーの釣りは北海道でしかやったことがない。3Bを2つも3つも付けてのキャスティングを思い出し馴染んでくる頃には帰る日になってしまうのが常だ。


フライはエッグフライを使い、これを2X(2号)のティペットに結ぶ。オモリは3B2個に2Bを一つ足す。秋田での釣りならロッドは3番でティペットは6Xか8X(08〜04号)で、オモリは1Bか2Bを1個というところだ。軽自動車から一気にトラックへと乗り換えたようで、乗りこなすまでに時間がかかる。中村さんの話では今はかなり減水しているというのだが、川はこの時期にしてはかなりの水が流れていた。


川は減水ということなので少しでも水が厚い所を探し、対岸沿いの深みや大石の周りなどを流していく。釣り始めてほどなく、目印に反応がある。ラインを引いて合わせると、かなりの引きが返ってきた。今回の第1号は30センチあまりの虹鱒だった。エッグフライをしっかり咥えていた。取りあえず一尾釣れて安心する。


同じ場所で続けて2尾目を釣る。これも30センチオーバーの良型だ。鮭の卵を十分食べているので、どの魚も太っていて体高もある。そのためにサイズの割には引きがとても強い。しかも虹鱒は最後まで抵抗するので、釣り人にはたまらない興奮を与えてくれる。


少し下流に移動して再び釣りを開始する。ここで本日一番の魚がヒットした。引き寄せようとしてもなかなか水面近くまでやってこない、と思うと突然水面を割って大きくジャンプしたりと川の中を縦横無尽に走り回る。沈下している木の中に入られてはおしまいなので、ロッドを立てて必死にこらえる。右下の写真はユーチューブにリンクしているので、写真を左クリックして頂くと奮闘の様子がご覧頂ける。





釣り上げて体長を計測すると44センチだった。この魚も栄養が十分のようで、この時期としては体色がよくて体高もかなりある。さきほどの強烈な引きが、何よりも魚の活性の高さを示している。手前まで来たかと思ってもすぐに走り出すので、取り込むまでは油断ができない。虹鱒釣り、くせになるかもしれない。


先ほどの興奮が覚めやらぬうちに、同じポイントで再びアタリがあった。今度も強烈な引きで、さきほどと同じくらいのサイズのようだ。2度目なので多少は余裕を持ちながら、ラインを巻いてくる。しかし、魚はなかなか水面まで上がってこない、かと思うと水面を割って大きなジャンプを繰り返す。こんなときに無理は禁物だ。ラインを緩めないように注意しながら、魚の動きに合わせてのやり取りが続く。(右下の写真は動画にリンク。)


中村さんにランディングしてもらう。計測すると41センチで、精悍な顔つきから見てオスのレインボーのようだ。この魚も体高があって丸々と太っていた。続けて大きなレインボーを釣り上げることができ、北海道まで来た甲斐があったとしみじみ思う。写真を撮ってから、すぐに水に戻す。


時間は午後3時近くになっていた。北海道は本州より日没が早く、辺りはだんだんと夕方の雰囲気になってきた。魚のアタリも遠くなり風も冷たくなってきたので、納竿することにした。午後4時、川は黄昏色に染まり始めていた。



地元町の福祉センターが温泉を併設していて、一般の人でも入場料を支払うと入浴ができる。温泉に浸りながら今日の釣りを振り返る。良い釣りに良いお湯、そして仕上げの夕食は温泉近くの「あさひ食堂」。外から店を見ると営業しているのかどうか分からない様子だったが、入ってみると立派な食堂でメニューも豊富な上に質も量も申し分なかった。今宵の宿泊地は中札内の道の駅だ。トレーラーに寝床をしつらえてもらい、湯たんぽまで用意してもらったので快適な夜を過ごせそうだ。

10月29日 土曜日 晴れ時々曇り

普段午前5時過ぎには起きているので、旅先でもその時間になると目覚めてしまう。中札内の道の駅には休憩施設はもちろんのこと、農産物の直売所や食事処などの施設が整っていて駐車場もかなり広い。それでも夏季にはキャンピングカーで埋め尽くされてしまうそうで、現在駐車場の拡張工事中だ。ゆっくり朝食を頂いてから、昨日と同じ支流に向かった。


昨日先行者が車を止めていた所の近くに車を止める。川はとても大きいので、昨日先行者に攻められていてもほとんど問題ない。釣り支度を整えて川へと向かう。インジケーターの下に1Xを1メートル、その下に2Xのティペットを付け、エッグヤーンを巻き付けたビーズを結びつける。


午前9時、釣り開始。川の深みや水中の溝など魚が付いていそうな場所にフライを流していくが、暫く魚からの反応はない。朝の水温は6度だった。早朝から強い北風が吹いていて、オモリを付けたキャストは更に難しくなる。思ったようなキャストができず、ポイントになかなか振り込むことができない。風に負けまいと無理に力を入れれば、川沿いに生えている木の枝にフライやティペットが絡まってしまう。



それでも何とか30センチクラスのレインボーを2尾釣ることができたが、後が続かなかった。河原には大水で流されてきた大きな木が至る所に横たわっていた。普段水がある時は徒渉が難しいと中村さんは言っていたが、減水している今でもかなりの水量と水圧があって徒渉は大変だ。増水の時はどのようになっていたのだろうか。


正午を過ぎたので、車まで戻って昼食を取る。午後からは昨日入った所から入り、そこから上流に釣り上がることになった。私のように年に一度しか来ない者は北海道ならどこでも釣れるような気がしてしまうが、魚の居る場所は決まっていてそれ以外の場所にはいないかいても数が少ない。そしてどの川も川の規模が大きいので、どこをどのように釣ればいいのか分からずに途方に暮れることになる。ガイドの中村さんがいてこその私の釣果なのだ、と自覚している。


今回釣行の最大のハイライトは突然やってきた。インジケーターが僅かに変化したので合わせると、根掛かりでもしたかのように動かない。そのうちぐいぐいと引き始め、腕にもの凄い重量感が伝わってきた。魚は逃げようとして暴れている、というよりは自分の行きたい方に行こうとしているような感じだった。体色は婚姻色の赤みがかなり差していて、鮭のようにも見えた。しかしそれは鮭ではなく、超大型のレインボーだった(右下の写真を左クリックすると動画にリンクする。)


魚は容易に寄ってこない。6番ロッドがバット近くまで曲がりながら、魚の引きに耐えている。ティペットは2Xだったので魚の動きに逆らったら簡単に切れてしまうだろう。フライの結び、テグスの結節などシステムのどこかが不十分だと一巻の終わりになってしまう。大物はかけるのも難しいが、取り込むことは更に難しい。10分近い格闘の末に、ようやく中村さんのランディングネットに収まった。釣れたという喜びよりバラさなかったことへの安堵感の方が大きい。体長を計測したところ、65センチでオスのレインボーだった。右下の写真を左クリックすると、格闘の様子が動画でご覧頂ける。



婚姻色に染まった見事なレインボーだった。私のアメマスのレコードも65センチだが、このレインボーも貴重なレコードになった。大物狙いで釣りをしている訳ではないが、大物が釣れればやはり嬉しい。格闘に疲れたのは魚も同じだったようで、川に戻そうとしても暫く動き出さなかったが、やがて悠然と川の深みへと戻っていった。


時間は午後4時近くなっていて、川は黄昏色に染まり始めてきた。思いがけず超大物と出会えた興奮が、徐々にこみ上げてくる。朝の水温は6度だったが、日中の水温は8度になっていた。水温の上昇が魚に活性を与えていたのかもしれない。千載一遇とも言えるチャンスをものにできたのは幸運というしかない。


釣りの後は温泉だ。本別グランドホテルで温泉に入る。ここは宿泊客以外へも温泉を開放していて、露天風呂もある。ゆっくり温泉に浸りながら、今日一日の疲れを癒やす。夕食はホテルからさほど離れていないレストランでジンギスカン定食を頂く。アガリはカボチャのソフトクリームで締めくくった。食後、明日の釣行を考慮して白糠まで移動する。今宵の宿泊地は白糠IC近くの除雪ステーションだ。今夜も湯たんぽの温もりを感じながら眠りにつく。

10月30日 日曜日 晴れ

昨夜は星空だったので朝の放射冷却がきつく、朝は零下2度にまで下がっていた。風は強い北風が吹いていて、難しい釣りになりそうな予感がした。白糠除雪ステーションは暖房のきいたトイレが設置されていて、野外宿泊者の頼れる見方になっている。朝食をゆっくり頂いてから、釣り場に向かう。今日はアメマスを狙う。


今日の釣り場は毎年訪れているいつもの川で、アメマスの川だ。廃屋の脇に車を止めて、川に向かって歩き出す。水はかなり少ないが、その分歩きやすい。今年のアメマスは小型が主体ということだったので、6番に変えて4番ロッドを用意した。セージの4番ロッドはやや固めで、ある程度の大物にも耐えることができる。そんな大物がかかればよいのだが。


3Xのティペットにエッグフライをセットし、オモリは2Bを二つ付けた。しかし、北風が強くてキャストがとてもやりにくい。アタリがないまま暫く釣り下る。やがてインジケーターに反応が出たので、反射的に合わせる。重く強い引きが返ってきた。慎重にラインをたぐり、岸辺へと誘導する。40クラスのアメマスだった。取りあえず一尾釣れたので一安心する。さらに下流に移動する。

この1尾から魚にスイッチが入ったようで、対岸沿いの深みにフライを流す度に良型のアメマスが釣れるようになった。エッグフライだけでなくビーズへの反応も良く、40〜45センチ前後の良型のアメマスが釣れだした。


ここは川岸が北斜面になっていて、完全に山陰になっている場所だった。しかし、水中にはかなりの数のアメマスが群れていて、絶好のポイントになっていた。この場所だけで30センチから40センチのアメマスを4尾釣り上げる。魚はまだまだいるので釣りを続けたかったが、この場所は寒すぎた。寒さをこらえ鼻水をすすりながらの釣りだったが、手がかじかんで竿の操作もままならなくなってきた。やむなく下流の日向に移動することにした。



気温は6度まで上がってきたが、秒速8〜10メートルくらいの風が吹いているので体感気温は零度以下になる。まるでスキー場にいるような気分になっていた。河原の水溜まりには薄氷が張っていた。下流の護岸下の深みにはかなりの数のアメマスが溜まっていた。フライをビーズに変えて、風に逆らいながら何とかアメマスのいる場所にビーズを流していく。40センチクラスのアメマスがビーズに食いつく(右下の写真を左クリックすると動画にリンク。)


このポイントにはまだたくさんのアメマスがいたが、風は一向にやみそうにもないのでここで納竿することにした。午前11時15分、2泊3日の北海道釣行は釣果に恵まれて終了となった。帰りに白糠町の漁協でシシャモを購入して、家内へのお土産にした。白糠のシシャモは決して安くはないが、味は抜群で毎年買っている。


除雪ステーションに戻り、昼食を頂く。食後、釧路空港まで送ってもらった。JAL542便は満員の乗客を乗せて、定刻の午後4時25分に離陸した。北海道は翌週天気が悪化して、広範囲で雪が降ったようだ。


北海道の釣りに戻る