北海道の釣り 2014


2005年から行き始めた北海道の釣りは、今回で10回目になった。毎年1回だけの釣行だから、北海道で釣りを始めてから10年目を迎えたことになる。これまでに1度だけ7月の阿寒川で虹鱒を狙ったことがあったが、残りはすべてアメマス釣りなので北海道を訪れるのは11月頃になってしまう。11月の釧路は既に冬で、たまに暖かい時もあるが、たいていは川に薄氷が張っている中での釣りになる。

北海道のアメマスの釣り方は色々あるが、この時期はエッグフライが最も効果的で今までに相当の釣果をあげてきた。しかし、今回はアラスカのサーモンやスチールヘッド釣りで活躍しているビーズをメインにしてアメマスを狙ってみた。果たして2014年の北海道の釣りは、ビーズを使った釣法が大いに活躍した思い出深い釣行となった。


11月15日 土曜日

釧路に午前中に入るには、自宅を午前5時過ぎに出て羽田発の7時台の飛行機に乗らなくてはならない。この時間の浜松町からのモノレールには運輸関係で働く人が大勢乗っていて、いつもかなり混雑している。釣り支度で一杯の大きなバッグを引きずりながら、全日空の荷物預けの窓口に向かった。飛行機は予定通り、午前7時40分に羽田空港を飛び立ち、釧路空港に午前9時20分に到着。荷物用回転テーブルの前で荷物が来るのを待っていると、私の荷物が3番目か4番目くらいに出てきて驚く。こんなに早く出てきたのは今までで初めてだった。到着フロアーで待っていたガイドの中村さんと落ち合う。

白糠駅の隣にはバスターミナルの待合所がある。その前が広い駐車場になっていて、そこに車とトレーラーを止める。トレーラーをそこで切り離し、釣り道具を車に積み込んで出発した。目指すはT川だ。中村さんの話では釣況はイマイチでポイントとなる場所は限られているとのことだった。

川沿いの道路を暫く走る。道の両側にはいくつもの牧場が有り、牛がのんびりと草を食んでいた。牧草地の傍らにはつがいのタンチョウが見えた。道端の空き地に車を止めて、すぐに釣り支度を整える。牧草地を横切り、川へと向かう。1年ぶりのアメマス釣り、果たして今年はどうだろうか。



予想していたとおり川の水は少なく、河原には冷たい北風が吹いていた。用意してきたはずの釣り用の手袋はザックの中にはなく、どうやら自宅に忘れてきたようだ。とにかく仕掛けをセットして釣り始める。この時期のアメマス釣りではエッグフライが最も確実だが、今回はビーズで最初からいくことにした。ビーズにかなり自信はあったが、折角用意して来たのに釣れなかったらどうしようという一抹の不安もあった。川の浅瀬や流れのない所は薄氷が張っていた。



ビーズを川の上流にキャストし、ポイントと思われる所を流しながらインジケーターの動きに集中する。やがてインジケーターが引かれたように止まる。バイトだ。すかさずラインを引いて合わせると、魚からの力強い反応が返ってきた。最初の一尾なので慎重にラインをたぐり、少しずつ岸に寄せてくる。良型のアメマスだった。ビーズが通用したようで嬉しい。


ビーズでの釣り方については昨年の釣行記でも触れたが、ティペットの途中にビーズを固定し、その下5センチくらいの所に針を結ぶ。魚はビーズをイクラだと思って食いつくが、すぐに偽物と見破ってビーズを吐き出す。この時、針掛かりする。たいていの場合、針は魚の口の内側に刺さっている。これは魚がイクラを捕食するときは噛むのではなく吸い込んで食べる、その際に針も一緒に吸い込まれ、吐き出すときに針が口にかかるというカラクリになっている。この釣り方はアメリカやカナダではとてもポピュラーだが、日本ではあまりお目にかからない。アメマス釣りにはフライやルアーなどを使用するが、ビーズはこのどちらにもあてはまらないような気がする。ちなみにアメリカのフライフィッシング専用区域では、ビーズを使用してはいけないことになっている。


この理屈は特に餌釣りの人にはなかなか理解してもらえないのだが、アラスカではこの方法でシルバーサーモンやスチールヘッド、レインボートラウトを釣っている。そして、論より証拠、事実は小説よりも奇なり。今、この北海道でアメマスが釣れている。


いくら北海道だからといっても、どこでも釣れるという訳ではない。特に水が少ない時には、魚のいる場所が限定されてくる。また、アメマスのような遡上魚の場合、常に上流に向かって移動しているので、昨日釣れた場所だからと行って今日もいるとは限らない。昨日数十尾も群れていたポイントでも、翌日には1尾もいないということがざらにある。中村さんが川の様子を慎重に見定めながら、魚のいるポイントを教えてくれる。私にはどこも同じように見えてしまうが、川底の地形の違いや水流、水量によって魚がいたりいなかったりと難しい。


対岸の倒木の周りが良いポイントになっている。倒木沿いに流せれば間違いなく釣れるようだが、ラインの操作がなかなか難しい。キャストして着水したラインにメンディングを施して、ラインが倒木と平行して流れるようにしなくてはならない。しかし、メンディングが強いと底を流れるビーズまで引っ張ってしまい、魚が定位している場所を流せなくなる。水中に影響がないようにメンディングのタイミングと強さを工夫しなくてはならない。でも、それがうまくいけばヒットの確率はぐっと高くなる。


少しでも水の厚い所や障害物の周りなどを丹念に探りながら、釣果を重ねていく。冷たい北寄りの川風にさらされながら、12時過ぎまで釣り続けたが、ここで昼食を取ることになった。車を止めた所まで戻り、そこで手作りの昼食を頂いた。アメマス釣りは1年に1回しかしないので、最初の一日は勘を取り戻すのが精一杯だ。


午後からは少し下流のポイントに入る。日が短くなっていきているので、まだ2時にもなっていないうちから影が伸び始めていて日陰は寒い。手袋を忘れたことが悔やまれ始める。


場所の選定が良いので、午後も好調に釣れ続いた。あいかわらずビーズへの反応が良く、ここぞというポイントでは続けて数尾のアメマスを釣ることができた。



相変わらず冷たい川風が吹いている。ビーズは使っているうちに、塗りがだんだんと剥げてくる。また、根掛かりもたまにはするので、その度に仕掛けを交換しなくてはならない。だが、かじかみかけてきた指で仕掛けを付け替えるのは一苦労だ。ビーズをティペットに通してペグで固定する。ビーズの先のティペットに針を結び直すと完了だが、段々と面倒になってくる。でもこれらをちゃんとしないと魚は釣れない。釣りには忍耐が常に求められている。



時間的に見てここが本日の最後のポイントとなりそうだ。対岸沿いに深みが続いていて、岸沿いにはいかにも魚が群れているようだ。仕掛けを点検して、早速キャストを開始する。アタリはすぐにやってきた。



釣れるアメマスの大きさは30センチから50センチくらいがほとんどだ。50センチくらいになると引きも強く、簡単には岸に寄ってこない。竿先を操作しながら、ラインを少しずつたぐっていく。針は返しをつぶしたバーブレスだが、針はがっちり口に刺さっているので外れることはほとんどない。岸に寄せてから針を外して優しくリリースする。


本日はここで納竿。既に午後4時をかなり回っている。この日の夕食は釧路市内の回転寿司だ。大漁港の釧路港から水揚げされてくる豊富で新鮮なネタが多いので、回転寿司と侮れない美味しさだ。ここ数年、釧路での夕食の定番になっている。満腹のお腹を抱えて店を出た。夜空を見上げると、ほとんど雲のない良く晴れた空だった。今夜はかなり冷えそうだ。

11月16日 日曜日

予想通りの寒い朝になった。ご案内の通り、北海道の釣りではガイドの中村さんが提供してくれるトレーラーハウスに寝泊まりしている。トレーラーの中では分厚い寝袋にくるまっているので体は少しも寒くないが、室内はぐっと冷えていて顔の冷たさで目が覚めた。外の気温は−6℃だった。

トレーラーの中で三人で朝食を済ませてから、一路T川に向かう。昨年は吹雪の中での釣りだったことを思えば、多少寒くても晴天の中で釣りができることに感謝しなくてはならない。


車を道端の空き地に止めて、川まで歩く。魚のいるところは限られているので、魚影を探しながら川を歩き下る。橋の上流側が深みになっていて、いかにも魚がいそうな場所に着いた。注意深く川の中を覗き込むと、川底近くに良型のアメマスが群れているのが見えた。早速釣りを開始する。


ビーズを上流にキャストして流してくると、やがてインジケーターがくくっと引かれる。アタリだ。すかさずラインを引いて合わせると、小気味のよう反応が返ってきた。良型のアメマスだった。


手前を攻めているとやがてアタリが遠くなる。魚がいなくなったのではなく、何か違和感を感じているらしく川の中央の方に移動したのだ。そこで、今度は川の中央を攻める。すぐに鋭いアタリがやってくる。50センチを越える良型のアメマスだった。


この場所は橋の影になっていて陽が当たらない。目の前が絶好のポイントで嬉しいのだが、寒さはかなりのものだった。寒さをこらえながら釣り続けていると、鋭いアタリとともに強い引きが返ってきた。流れの中を右に左にと泳ぎ回っている。何とか寄せてくると、60センチクラスのアメマスだった。


久々の大物だったので記念撮影。今までのレコードと同じくらいの大物だった。素早く撮影して、すぐに流れに戻した。


この場所にはまだまだ相当な数のアメマスがいるようだ。その後も良型が釣れ続けたが、やがて私の今までのレコードを超える魚が現れる。インジケーターが僅かに引かれたので反射的に合わせたのだが、根掛かりでもしたかのようにラインをなかなかたぐることができない。少しするとラインが少しずつ動き始めた。これは大物だ。そのうち流心の方に泳ぎだした。流心に入られては魚の重みと流れの強さに耐えられず、釣り糸が切れてしまう。そちらにだけは行かせられない。竿を一杯に矯めながら動きを止める。


少しずつ川岸に誘導して、何とか岸にズリ上げる。大きなアメマスだった。婚姻色が体に出ており、鼻も曲がっている。計測してみると65センチだった。今までのレコードが60センチだから、5センチも更新したことになる。


実はこのアメマスを釣る前に、これより更に一回り大きいやつをバラしていた。針掛かりはしたのだが、流心に入られて釣り糸を切られてしまったのだ。逃がした魚は大きいと言われてしまうのであまり触れたくないが、切れた瞬間に見えた尾ビレは巨大にものだった。そのことがあったので、今回の魚とのやり取りをうまくすることができたのだった。写真を撮ってから流れに戻した。


本当に凄いポイントだった。その後も良型は釣れ続き、午前中はこの1カ所だけで終わった。50センチ前後のアメマスが何尾も釣れ、数えるのも忘れてしまった。しかし、川底近くにはかなり大きなアメマスがまだ何尾も悠然と泳いでいた。



白糠の駅前に戻り昼食をとる。白糠駅の隣にバスターミナルのビルがあり、その前が広い駐車場になっている。バスの本数は多くないが、ここから釧路や帯広方面に行くことができる。あまり賑わっているとはいえないが、駅前には2つもホテルがあった。仕事でやってくる人が多いのだろうか。


午後からは午前中よりやや下流にある別の所で釣り始める。川幅は広く水が少ないので、ここもポイントはかなり限定されそうだ。それにしても、今日は日曜日だというのにほとんど釣り人を見ない。年によってはポイントというポイントに釣り人が入っているということもあるのだが、今回はそれまでに数人の釣り人を見ただけだった。それだけ釣りが難しい状況なのだろう。


それでも中村さんのポイントの選定が良いので、入れ食いとはいかないものの随所でアタリがある。午前中より型は一回り小さくなったが、元気なアメマスが釣れている。


川幅が絞られて、流れが急にところにやってきた。このような場所での釣り方は難しい。アップクロスにキャストしたら、直ちに上流側にメンディングする。オモリとビーズが素早く沈めなくてはならない。こういう場所では魚は流心の川底に定位しているので、そこにビーズを送り込まなければ魚は釣れない。


速い流れの中での竿の操作は難しく、水の飛沫でインジケーターも見にくい。中村さんのアドバイスをもらいながら、何とか数尾のアメマスを釣り上げる。


流心を攻めた後は瀬脇と、それぞれに定位しているアメマスを狙う。流心の向こう側の瀬脇を攻めるのは簡単ではない。ラインが流心の強い流れであっという間に流されてしまうから、絶えずメンディングを繰り返さないとフライを魚のいる場所に届けられない。何とか誤魔化しながら釣り続ける。



午後4時を過ぎて陽がだいぶ傾いてきたので、釣り上がりながら車に戻る。魚はポツポツと釣れ続き、今日も右腕が痛くなるほど釣ることができた。特に午前中の大物は圧巻だった。アメマスは大きいものは1メートルを超えるものもいるらしい。鮭の遡上を追って海から遡上し、自らも産卵する。鮭は産卵後に死んでしまうが、アメマスはまた再び海に帰っていく。これを数回繰り返すうちに大きくなっていくのだろう。


夕食は釧路のイオンの中にあるレストランだった。サラダバーで野菜を補給し、ハンバーグで栄養をつけた。食後、我が家へのお土産に地元釧路で水揚げされたシシャモを購入する。国産のシシャモは普段食べている外国産のシシャモとかなり異なり、身が柔らかく風味も豊かだ。値段は安くはないが、年に一度の贅沢で買うことにしている。

買い物をしてからお風呂に向かう。いつも利用している「大喜湯」で、イオンからも近い。ここで冷えた体を温め、一日の疲れを癒やす。風呂から上がり、休憩所でテレビ鑑賞。NHKの「堪兵衛」は見逃せない。今夜は昨夜よりは寒くなさそうだ。

11月17日 月曜日

今朝の気温は−3℃。昨日よりはましだが、やはりかなり寒い。それでも今日が最終日なので、昨日よりも早い午前5時半に起床する。朝食を済ませると、昨日と同じT川に向かう。河原まで車を乗り入れ、釣り支度を整える。


川の水は透き通るようにきれいだ。川沿いには牧場がいくつか点在するだけで、大きな集落はない。人の介入の少ない川は汚れようがないということか。川底には産卵を終えて死んだ白鮭が横たわっていた。今年は遡上数が多かったようで、川のそこここで鮭を見ることができた。


最初の場所は対岸沿いの深みがポイントだった。河原が広く流れが緩い所は釣りやすい。たちまち2本の良型を釣る。しかし、ここでアタリが止まってしまい後が続かない。上流のポイントを探していた淳子さんが良いところを見つけたようなので、そちらに移動することになった。


川岸沿いに木が生えていて、その枝が川の方まで伸びている。その枝の下が絶好のポイントになっていた。しかし、枝が邪魔して簡単にはその下を流すことができない。サイドキャストで何とか枝の下の空間を通していかなくてはならない。ここではビーズからエッグフライに変更することにした。折角用意してきて一度も使わないのもなんだし、セットも楽だ。サーモンピンク色のエッグフライを針に結び、対岸沿いを流していく。


流れがゆっくりなので、ルースニングに変更する。ルースニングなどと言うと気取った言い方だが、フライのウキ釣りといった方が適切かもしれない。しかし、流れが緩い場所ではとても効果的な釣り方だ。ここは枝が邪魔して釣りづらい場所だからなのだろうか。魚は驚くほど溜まっていて、ほとんど一投一尾で釣れ続けた。同じエッグフライを使っていると、すぐにボロボロになってしまうほどだった。


途中からまたビーズに戻す。アタリは順調に続いている。型はイマイチというところだが、とにかく魚影が濃い。この川の魚が全部集まっているかのようだった。数尾釣っては少し場所を変える。暫くしてまたその場所を流すと釣れ始める。良型の魚は枝が川面に覆い被さるような場所にいるので、そこを狙うとすぐに枝にからまってしまう。その度にティペットを交換してビーズを付け直さなくてはならない。とても面倒な作業だが、大きいのを釣りたければ我慢しなくてはならない。


釣ってはリリース、釣ってはリリースを何回繰り返しただろう。キャストがうまければ枝の下のポイントまでフライを振り込めるのだが、無理に振り込んで何度も枝に引っかけてしまった。うまく流せれば魚は確実に食いついてくるのが分かっているだけにがっかりしてしまう。それでも何とか数尾を釣り上げた。


午後12時納竿となった。中村さんは釣況は厳しいと言っていたが、それでも良い場所を選んでくれたおかげで充実した釣行となった。腕が痛くなるほどたくさんの良型アメマスを釣ることができたし、釣り逃がしたが巨大なアメマスも目撃できた。来年は是非再会したいものだ。


白糠駅のバスターミナルに戻り、昼食を頂いた。釣り道具などをバッグにしまい、荷造りを済ませる。釧路空港まで約30分の道を送ってもらう。飛行機は定刻の午後2時25分に釧路空港を飛び立った。さすがに平日なのでいくつかの空席はあったが、ほぼ満員の乗客だった。

確かに11月の釧路は寒くないとは言えないが、6番ロッドを絞り込むアメマスとの出会いを思い出すと来年の釣行が待ち遠しくなる。来年の釣りにはどんな味付けができるだろうか。

北海道の釣りに戻る