北海道の釣り 2012


11月2日

羽田空港8時15分発釧路行き日本航空1145便は、満員の乗客を乗せて定刻に離陸した。関東地方を北上し東北地方を縦断した後に、北海道のえりも岬沖合を北東方向に飛ぶ。 「フィッシングガイドかわせみ」の中村さんから、昨日までの雨で道東の各河川は増水していて、ほとんどの川は釣りにならないと聞いていた。果たして、上空から見る限り、道東のどの河川ももの凄い濁りが入っていて、まるで泥道のようになっていた。

飛行機は定刻通りに釧路空港に降り立った。到着ロビーには懐かしい中村夫妻の顔が見えた。お二人とも笑顔を出迎えてくれた。荷物を積み込み、釧路空港から出発した。大雨のために濁流と化した川ばかりで、今年の北海道釣行は果たしてどうなるのだろうか。

車は国道38号を南西に向かう。途中の車窓から釧路、白糠周辺の川が見るが、どの川も真っ茶色の濁流だった。この濁りが取れるのはいつ頃だろうか。浦幌町から国道336号に入り、車は広尾町の国土交通省北海道開発局帯広開発建設部の豊似防災ステーションで止まった。

ここで手作りサンドイッチの昼食を頂いた。トレーラーハウスを切り離し、一路えりも町のS川に向かった。海岸沿いの国道336号は別名「黄金道路」と呼ばれ、防潮堤や落石防止天井、トンネルなどの人工構造物が続いており、どのくらいの工事費がかかったか想像もできない。南に走りえりも町に入ると、ほどなくS川に到着した。かなり増水しているものの、水の濁りは他の川よりは少なく、場所を選べば釣りになりそうだった。車を道端に止めて、釣り支度に取りかかった。

川沿いの道。 釣り支度を整える。

6番のロッドに5番のリール、リーダーは0Xを短めにして、2Xのティペットを結ぶ。一昨年までは4番のロッドを使用していたが、大物が釣れると手返しが悪くなり、腕への負担も大きくなる。そのため、昨年からは6番のロッドを使用している。これだと間違って鮭がかかっても対処可能だ。

ティペットの点検をしてもらう。 増水の川。

エッグフライは色々な色があるが、最初は定番のサーモンピンク色にした。スプリットショットとして2Bを2つ付けて、さあ釣り開始だ。最初は左岸側少し下流の巻き返しを狙ってみる。たるみを流したり、流れに乗せて流したりしたのだがアタリはなかった。

左岸側の巻き返しを狙う。 流れの巻き返しや流れの中などを探っていく。

次に目の前の浅瀬を狙ってみる。ほんの数メートル先の浅瀬なのだが、どうやら魚はそこに溜まっていたようだ。第一投からインジケーターに明確なアタリが出る。すかさず合わせると小気味のよい引きが返ってきた。今回の最初のアメマスなので、慎重に寄せてくる。30センチちょっとの小型のアメマスだった。

目の前に魚は溜まっていた。 慎重に寄せてくる。

本日最初の一尾なので写真に撮ってもらう。 型はイマイチだが。

続けてアタリが出る。これも良型のアメマスだ。ここだけで7,8尾のアメマスを釣り上げる。しかし、ここでアタリが止まってしまった。どこをどう流してもアタリがないので、少し上流に移動する。また、ポツリポツリとアタリが出始めた。

流れに乗ると取り込みは大変だ。 良型のアメマス。

少しずつ上流を狙っていく。手前の浅瀬、流心、向こう側の流れの中を順に攻めていく。入れ食いとはいかないが、時々良型のアメマスが竿を絞る。

少しずつ上流のポイントを探る。 これも良型のアメマス。

本来ならば上流へ下流へ、さらには対岸へと移動しながら釣りの範囲を広げていくのだが、水量が有りすぎて釣りのできる場所が限られていた。陽も落ちてきてアタリが段々遠くなってきたので、この辺で納竿することにした。2時間余りの釣りで14尾の釣果を上げることができた。

ふと川沿いの林の中を見ると、大きな木の幹に熊の爪痕があった。熊は自分の縄張りを主張するために木に爪痕を付けるというのは聞いたことがあるが、実際に見るのは初めてだ。ここは熊の縄張りの中なのだった。

熊の爪痕。 熊が自分の縄張りを主張している。

豊似防災ステーションに戻り、トレーラーハウスを繋いでから今日の宿泊地となる道の駅「忠類」に向かう。幕別町にある道の駅「忠類」にはナウマン温泉が隣接していて、その隣には忠類ナウマン象記念館まである。そこには1969年の発掘された12万年前のナウマン象の化石が展示されている。この道の駅で数年前にも宿泊したことを思い出す。

上空には月が出ていた。 忠類ナウマン象記念館正面。

ここには宿泊施設もあり、道の駅、温泉、レストラン、ホテルの複合施設になっている。レストランで餃子スープ定食の夕食を済ませてから入浴した。ここの温泉はPH9.7のアルカリ泉で、大浴場、露天風呂、サウナが利用できて400円と格安だ。ゆっくり入浴してから、ほかほかの体でトレーラーハウスに戻る。明日の好釣を期待して眠りについた。

道の駅、温泉、象記念館が集まっている。 今夜の宿泊先のトレーラーハウス。

11月3日

5時半起床。朝の気温は6度くらいなのでも例年に比べればとても暖かい。朝食を済ませると、昨日と同じ豊似防災ステーションに向かう。ここでトレーラーハウスを切り離し、S川に向かう。途中、広尾町を流れるR川に寄ってみる。

道の駅の朝。 C川の河原。

昨日よりは多少水位が下がって、濁りも僅かだが取れてきている気がしたので様子を見ることにした。川の端に車を止めて、釣れそうな場所を見つけ、エッグフライを結んでキャストする。何回かキャストしたが、反応は全くない。やはりまだ釣りには早いようだった。

釣れそうなポイントを探すが見当たらない。 河原の花。

続いて少し南に下がり、昨日二人の釣り人がいるのが見えたH川の様子を見ることにした。ここは濁りがだいぶ取れてきて、何とか釣りができそうに見えた。道路脇の空き地に車を止めて、釣りに取りかかる。ここはという所を何回かキャストしてみたが、ここも反応は全くなかった。ここで時間をかけるのももったいないので、早々に切り上げて、S川に向かうことにした。

H川にて。 川は濁りが少ないが、魚からの反応はなし。

S川では昨日釣果のあったポイントに入る。昨日よりは若干だが濁りも取れてきているが、水量は相変わらずで、普段なら川の中まで見通せる透明度も今はない。東北の小河川なら一日で濁りが取れるのだが、さすがに北海道の川は流程が長く勾配も緩いのだろう。エッグフライで早速釣り開始。

一日経ったのに、昨日とあまり状況は変わっていなかった。 魚影を探す。

少しでも水が厚い所や流心の底を狙ってフライを沈める。秋田や山形の渓流釣りでは流れ出しを狙うことがあるが、流心を狙うことは少ない。でも、ここ北海道では食い気のある大型アメマスは、流心で流れてくる獲物を待っている。

結局昨日と同じポイントを攻める。 良型のアメマス。

濁った水のためにインジケーターが見にくいのだが、フライへの反応は昨日よりも良かった。ただ河床には流れてきた小枝や木の葉が石の間に溜まっていて、これに引っかかるのが玉に瑕だったが、午前中だけで14尾の良型アメマスを釣り上げることができた。

川の中に立ち込んでキャスト。 技術がないのでなかなか狙ったポイントにキャストできない。おまけに風もある。

今年の北海道は暖かい。この時期、寒いときは零下になり、河原に薄氷が張っていることもあったが、今年は川の中に立ち込んでも冷たくない。手袋も不要だった。この水温の高さは鮭にはダイレクトに響いているようで、九月の忠類川の鮭釣りは惨憺たる状況だったようだ。

ツキヨタケのようなキノコ。 フィッシュ オン。

今回は60センチ、70センチの大型の顔は見られなかったが、40センチから50センチくらいの良型のアメマスが竿を絞ってくれた。流れの中で釣っているので、魚体の重さに水圧が加わるので、かかるとまるで大型がきたような強い引きになる。

流心から流れだしへとフライを送り、フィシュオン。 エッグフライをがっちりくわえている。

お昼になったので車まで戻る。林道脇の空き地に椅子を並べて、ほかほかのおにぎりと熱々の肉じゃがスープを頂いた。ふと林道の上手を見ると、一匹のキタキツネがこちらに向かって歩いてきた。とぼとぼという感じで歩いてきて、我々の居る所は林に避けて、下ったところでまた林道に現れ歩き去った。やがてまた一頭のキタキツネが、今度は林道の下手から歩いてきた。我々の近くは林の中を歩いて上手に向かっていった。体型やしっぽの形が少し違うので、きっと別のキツネだろう。写真を撮ろうとして近づいたら逃げられてしまった。

藪の奥に逃げるキタキツネ。 この川で鮭を釣ってはいけない。

昼食後は上流で本流の左岸側に流入する支流に入ることになった。私はエッグフライをビーズに変えてみることにした。アラスカでスチールヘッドを釣ったときと同じ仕掛けだ。今回、北海道で是非試してみたいと持参してきたものだ。これが大成功! たちまち良型のアメマスを数尾釣り上げる。

竿を絞るアメマスの引き。 キャッチ・アンド・リリース。

ビーズでの釣りを他の人に説明すると、一様に「えー! そうなのかなー?」という半信半疑のような顔をする。

ビーズでの釣り方は、ビーズをティペットに通しておき、ティペットの先には釣り針を結び。針の上5センチくらいのところにビーズを固定する。これだけの仕掛けだ。

魚はビーズが流れてくると、イクラだと思って水と一緒に吸い込む。その時、釣り針も一緒に魚の口に吸い込まれる。魚は偽物のイクラだとすぐに気づき、ビーズを吐き出す。その時に針が口にかかるのだ。だからかかった魚を見ると、針は必ず魚の口の内側に刺さっている。アラスカではオーソドックスな釣り方だが、日本ではあまり馴染みがない。

私としては魚の生態に最もかなう釣り方だと思うのだが、なかなか納得を得るのは難しい。

ビーズで釣れたアメマス。 釣れたアメマスはどれも口の内側に針掛かりしている。

この支流の上流には鮭の孵化場がある。そのため、川の中にはアメマスの他にたくさんの白鮭が泳いでいる。海からの長い旅を終えて、生まれ故郷に帰ってきたのだ。私はこれを狙っているわけではないのだが、アメマスに混じってこれがたまに釣れてしまう。6番のロッドで釣りをしているので、これに鮭がきてしまうと大変だ。鮭はもうかなり弱っているので、何とか釣り寄せることはできるが、こちらも時間と体力を消耗してしまうのでできれば避けたいのだが仕方ない。

孵化場の前。 ちょっと休憩。

ビーズとエッグを交互に使いながら、何とか20尾のアメマスを釣り上げる。流れの中を釣っているので、魚がかかると魚の引きに水の圧力が加わり、腕に大きな力がかかる。魚が釣れるのは嬉しいが、そのうち腕が悲鳴をあげ始めた。まさに嬉しい悲鳴なのだが。

川沿いにはシラカバなどの林が続いているが、ここら辺は熊の縄張りのようで林の中の木々には熊の爪痕が至る所で見られた。本流沿いでもいくつかあったが、この支流沿いにははるかに沢山の爪痕があちらこちらに見られた。

真新しい爪痕。 これも新しい。

新しい爪痕、不明爪痕、木に登った跡など木々に残っている。鮭の孵化場には鮭が沢山集まってくるので、熊にとってこの辺りはレストランも同然なのだろう。

熊が木に登った跡。 木肌に食い込む爪痕。

爪痕の中にはつい最近付けられたと思われる真新しいものもあり、辺りには食い散らかした鮭の身が落ちていた。一体いつ頃いたのだろう。会わないことをひたすら祈るばかりだ。

アタリが遠くなってきたので納竿することになった。厳しい条件の中だったが、中村さんのガイドのおかげでどうにか釣ることができた。この日は合計34尾の釣果だったが、川の状況を考えるとベストの釣果だ。

一日ご苦労様でした。

豊似防災ステーションに戻り、トレーラーハウスをつないで今夜の温泉と宿泊先に向かった。今日の温泉は大樹町の晩成温泉だ。海のすぐ近くにある温泉で、この地は十勝開拓の祖と言われる依田勉三率いる晩成社が拓いた所だ(地元パンフより)。浴場からは太平洋を眺めることができるらしいが、実際には湯気でなかなか見えない。典型的なヨード泉で、独特の香りが鼻をつく。海に近いせいか塩分もかなり濃いようだ。

晩成温泉の建物。

温泉にゆっくり浸かり、釣りで酷使した右腕を揉みほぐす。夕食は温泉内の食堂でミソラーメンを頂いた。食後、今夜の宿泊先である浦幌の道の駅に向かう。明日は白糠町での釣りになるので、できるだけ近くの道の駅を選んでくれたのだ。

夜の国道336号は行き交う車も少なく、約80キロの道のりを快適に走る。道の駅は国道から僅かに入ったところにあるので、静か(トラックが少なければ)に寝ることができる。夜空は星で一杯だった。

11月4日

4時45分起床。今日も暖かな朝だった。午後の便で帰らなくてはならないので、今日の日程は少しタイトだ。少しでも釣りの時間を確保するために、早めの行動となった。朝食前に浦幌町から白糠町まで移動する。白糠町のパークゴルフ脇の駐車場に車を止める。ここで少し遅い朝食を頂く。8時15分、トレーラーハウスを切り離し、C川の上流を目指す。

道路脇の駐車場から山を望む。 C川上流部。路肩に車を止める。

川の下流部は水位が多少下がったものの、相変わらず濁水が続いている。ここならと思うところで竿を出してみるが、アタリはない。今までに行ったことのない上流部まで車を進める。

C川上流部の流れ。 水にはシルトのような濁りが入っている。

道は舗装路から未舗装路に変わり、道幅も川幅も狭くなってきた。水の色も下流部に比べればかなり良くなってきている。果たしてアメマスはいるだろうか。半信半疑で釣りを開始する。

急な土手を下って河原に立つ。 増水していてポイントが絞れない。

水量があり過ぎてポイントを絞りづらいが、少しでも波立つ所を探してキャストする。数回キャストした後に、待望のアタリがきた。やや小型のアメマスだが、厳しい状況の中の一尾なので慎重に寄せてくる。

やっとバイト。慎重に寄せる。 本日最初の貴重な一尾。

しかし、アタリは続かなかった。まさかこの一尾だけしか川にはいないということはないだろうが、粘ってみてもだめだった。場所を大幅に変えることになった。この川の支流のN川に行くことになった。ここへ来る途中に車窓から見た限りでは、濁りが少し治まっているように見えたからだ。

C川本流。どれだけの土が流失しているのだろうか。 支流は濁りが少ないようだ。

最初に本流との合流点近くで釣りを始めた。釣り始めてすぐにアタリがあったが、引きはあまり強くない。寄せてくると、これがなんと山女魚だった。山女魚は北海道ではヤマベと呼ばれているが、25センチくらいの本州では良型に属する山女魚だった。その後、かなりしつこく粘ったにもかかわらず、アタリは来なかった。少し上流に移動する。

魚がいそうな所を狙ってキャストを続ける。 北海道で釣った最初のヤマベ(ヤマメ)。

対岸の深みを狙ってキャストを繰り返したが、アタリはなかなか来ない。エッグフライの色を変えたり実績のあるストリーマーも使ってみたのだが、やはりアタリは来なかった。

本日最後のポイント。 エッグフライの色を変えたり、ストリーマーを使ったりと悪戦苦闘。

それではと蛍光黄緑のエッグフライに変えてみる。暫くキャストを繰り返すうちに、待望のアタリがやってきた。慎重に寄せてくる。45センチくらいの良型のアメマスだった。この一尾が今回最後のアメマスとなった。

ようやくきたバイト。 良型のアメマスだった。

飛行機の時間があるので、早めに納竿した。竿をたたんでいると淳子さんが蕗の薹を沢山持って上流から現れた。北海道では春と秋の2回、蕗の薹が採れる。例年ならこの時期に沢山採れるのだが、今年は暖かいせいか数は多くない。貴重な蕗の薹を頂き、自宅へのお土産にすることにした。

11月とは思えないのどかな景色。 小春日和のような一日だった。

駐車場まで戻る途中の道で、地元の駅伝大会に出くわした。地元の手作り駅伝という感じで、走る人も見守る人も楽しそうだった。駐車場に戻り昼食を頂いた。いつも美味しい食事を頂き、感謝に堪えない。食後荷物をまとめて車に積み込む。釧路空港までは約30分の道のりだ。

年に一度の北海道3日間釣りの旅は、瞬く間に終了した。今年は暖かい日々が続き、快適な毎日だった。釣りは自然が相手だから、天候によって状況が良くも悪くもなるのは避けられない。それがまた醍醐味でもある。厳しい条件の中でも50尾ものアメマスを釣ることができたのは、少しでも良い釣り場を求めて奔走してくれた中村さんのガイドのおかげだった。深く感謝したい。来年も楽しい釣りができることを期待したい。

アメマスのアップ。 遠くの山には積雪があった。

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