2011年秋 コディアック


Kodiak Silver

毎年アラスカの釣りを計画するとき、だいたい1月か2月頃だが、今年はどこに行こうかと迷う。翌年度の仕事のスケジュールやあるいは人事異動があるかもしれない、などと考えると比較的無難な9月になってしまう。そして釣れる魚体の素晴らしさ、釣りの醍醐味を考えると、やはり足はコディアックに向かってしまう。

今年は久し振りにキングサーモンが釣りたくて、当初、ディリンガムやキングサーモン村に近いヌシャガクリバーに行くつもりだった。3月中に飛行機の手配と現地やガイドの手配をほぼ完了していたが、3月末に人事異動の内示を受けてしまった。新しい職場での仕事のスケジュールが見えず、釣行計画が立てられない。というわけで、今年も9月3日から11日までアラスカのコディアックを訪れた。

9月3日 土曜日

デルタ航空296便は、定刻通りにシアトルに到着した。入国審査は順調に済んだが、荷物がなかなか出てこない。荷物のスクリーン検査が長引いたらしい。シアトルでアラスカ航空に乗り換え、13時30分にアンカレッジに到着した。

次のコディアックまでの飛行機は17時45分発なので、待ち時間がかなりある。これを利用して友人の高田さんと会うことにしていた。彼女はバッゲージクレームの入口で待っていてくれた。一年ぶりの再会だ。私たちを市内観光に案内してくれることになっていたが、先に荷物を預けようとエラ・アビエーションのチェックインカウンターに向かった。

搭乗券の予約番号を告げると、一便早い15時15分の便に間に合うと受付の人が教えてくれた。早くつける方が何かと安心だと彼女も言ってくれたので、その飛行機に変更することにした。市内観光に色々プランを練ってくれた彼女には本当に申し訳ないことをした。彼女にチェックインの手続きを手伝ってもらい、空港の外れにある出発ロビーで見送ってもらった。

我々が乗り込んだ飛行機は予約時には運行予定表になかった飛行機だったが、こういうことはよくあると高田さんが言っていた。機長を含めて18人乗りの小型双発機は、小雨のアンカレッジを離陸した。

狭い機内に満員の乗客。 飛行機は小雨のアンカレッジ空港を飛び立つ。

飛行機は雨雲の中を飛び続け、1時間10分ほどでコディアック空港に到着した。この空港は滑走路の突き当たりに大きな山があって、それが空気の流れを妨げるので、海上で発生した雲やガスが溜まりやすい。そのため、有視界飛行のエラ・アビエーションの航空機は、アンカレッジからここまで飛んできても、ガスで飛行場が覆われてしまうと着陸できず、そのままアンカレッジに引き返すこともあるという。今回は無事に着陸できるようだ。

窓の外にはキーナイ半島が見える。 コディアック空港に無事到着。

ロシアン・ヘリテイジ・インにチェックインして、荷物を解く。午後8時に近くの中華料理店で、ガイドの大木さんと滞在中の行程を打ち合わせた。彼には8日と9日のガイドをお願いしている。いよいよ明日から釣り開始だ。

9月4日 日曜日

朝5時起床。外は雨が降っている。朝食を手早く済ませ、身支度を整えて6時15分に出発する。今日の最初の目的地はバスキンリバーだ。パサギシャクリバーが好調だと大木さんから聞いていたが、その川は大木さんにガイドをお願いする木曜日まで取っておくことにした。

バスキンリバーはダウンタウンから車で10分ほどと近く、入川が容易なポイントが多数あるので人気が高い。まずブロークンブリッジと呼ばれるポイントに入ろうとしたが、駐車場が一杯で車が止められない。すごい人気だ。次にウッドデッキのあるポイントに行くと、駐車場には数台の車が止まっていたがスペースがあったので車を止めることができた。すぐにウエイダーを履いて川に向かう。

川沿いにウッドデッキがあるポイント。 デッキの前が良いポイントになっている。

ここは川沿いにウッドデッキが設置されていて、ベンチも置かれている。駐車場に車がたくさん止まっていたが、ほかの釣り人はいなかった。ここの下流にある「崖下のポイント」に行っているのだろう。早速、釣りを開始。釣り針に餌の筋子の塊をエッグループで固定する。川の斜め上流に餌を投入し、川底をドリフトさせていく。ずくにアタリがやってきた。魚が餌の筋子を銜えている様子が竿先に伝わってくる。十分に間をおいてから強く合わせる。がっちり針掛かりしてようだ。逃げようとする魚の強烈な動きが手に伝わってきた。ミチイトもハリスも20ポンドの強度なので、切れることはない。慎重にリールを巻いて岸に寄せてくる。ランディングネットに収まったのは、今季初の見事なメスのシルバーサーモンだった。

次の一尾がなかなかこない。8時を過ぎたのでここらが潮時かなと思っていると、水中の仕掛けが不規則に動いているのが見えた。食っている。力強く合わせた。再び強烈な魚の動きが手元に返ってきた。この手応えが味わいたくて、遠い道のりをやってきたのだ。慎重にリールを巻いて、ネットに取り込んだ。9時前には二人とも定数の一人二尾を釣り上げることができた。

ここのポイントだけで2尾釣れる。 ストリンガーにつながれた今朝の釣果。

木の間にカケスがいた。 夏の終わりを告げるファヤーウィード。

今日は釣り初日なので、別の川の様子を見に行く。まずはアメリカンリバーだ。バスキンリバーから車で30分ほどの所だ。車を路肩に止めて、橋の上から川を覗き込んだ。川の中には何百尾ものピンクサーモンが群れをなして泳いでいた。

橋から川へ下りる道に立つ看板。 アメリカンリバーに架けられた橋。

釣りの規則で橋から下流は解禁だが、橋の上流は禁漁になっている。白石さんはルアーで、私はフライで、川の左岸側から釣り始める。ルアーにはスピナーを使っているが、いつもはすれ掛かりが多くて困るのだが、今回は魚の活性が高いらしく、口掛かりで釣れる魚が多い。

橋の下流側。 橋の上流側。こちらは禁漁になっている。

私は川の流心にフライをキャストする。何回かキャストしているうちに、インジケーターがすーっと止まった。アタリだ。ラインを引いてしっかり合わせる。猛烈な引きが返ってきた。この激しいアタリはピンクサーモンのものではなく、シルバーサーモンだ。魚の走りに合わせて動く。ようやく岸まで寄せてくる。美しい魚体のシルバーサーモンだった。私が作ったシェニールのフライをがっちく銜えていた。写真を撮ってからリリースした。

真っ黒になって群れるピンクサーモン。 自製フライで釣れたシルバーサーモン。

地元の人に撮ってもらう。 フライに食いついたピンクサーモン。

地元の釣り人も家族連れで来ていた。川の中はほとんどピンクサーモンだから、彼らのルアーにヒットするのはピンクばかり。本命のシルバーはなかなか釣れていなかった。

橋の下流側は深みになっていて、たくさんのサーモンが群れている。絶好のポイントだ。 腰にハンドガン。地元の釣りスタイルだ。

この後にオルズリバーへ足を伸ばした。橋の上から川を覗くが、数尾のピンクサーモンが泳いるだけだった。しかし、この川の素晴らしさは後日知ることになる。初日から飛ばしすぎると後でがっくりくるので、今日は早めに上がることにした。

9月5日 月曜日

今日は海釣りの予定だったが、風雨で海況の悪化が予想されたので、昨日のうちに水曜日に変更してもらっていた。一方、川での釣りには大して支障がなさそうなので、川へ釣りに行くことにした。朝5時30分起床、6時15分に宿を出て、昨日と同じバスキンリバーに行く。

私の部屋のクィーンサイズのベッド。 キッチンがついていて自炊も可能だ。

予報通り天気は悪く、強い風が吹き冷たい雨が降っている。駐車場に車を止めて、暫く様子を見る。駐車場にはすでに3台の車が止まっていたが、どうしたことかそのうちの2台が明るくならないうちに何処かへ行ってしまった。近くに熊でも出たのではないかと心配になる。

まだ暗い車窓からの風景。 まだ暗い川面。だが魚の活性は高い。

外は雨でも川の中は普段通り。むしろ川面が暗いので、活性が高いかもしれない。7時から釣りを開始する。餌の筋子の塊をつけてキャストする。何回か流しているうちに、竿先にアタリがきた。しっかり食い込んだ頃を見計らって、強く合わせる。フィッシュ・オン!魚は上流に下流にと走り回るが、ゆっくりリールを巻きながら岸に寄せてくる。ネットに収まったのは良型のシルバーサーモンだった。

開始早々に釣れたシルバーサーモン。 今日も定数のシルバーサーモンが釣れた。

魚は岸から3,4メートルの所を泳いでいるらしく、ちょっと上流側に放るだけでいい。暫くしてアタリがきた。合わせたときの手応えは、さっきのよりも大きい。川の中を走り回り暴れまくるので、なかなか岸に寄ってこない。リールのドラグを締め直して、慎重にリールを巻き続け、どうにかネットに取り込んだ。やはり先ほどのよりも一回り大きかった。

雨の中で3時間近く釣りをしていて、体はすっかり冷え切ってしまった。ダウンタウンに戻り、港のカフェのカフェモカで暖を取る。モカの甘味が疲れを癒してくれた。

雨の降り続くウッドデッキ。 港のカフェ。色々な種類のコーヒーが楽しめる。

宿に戻り、昼寝をしてから釣りを再開することにしていたが、午後2時を過ぎても雨は一向に止まず風は益々強くなってきたので、今日の釣りを断念することにした。まだ先がある。ゆっくりシャワーを浴びて、明日のために早寝をしよう。

9月6日 火曜日

朝食はシナモンロールとコーヒー、野菜スープとキュウリの板ずり、それにオレンジジュースというのが私の定番だ。旅先では野菜の摂取が少なくなるので、野菜には気を遣っている。それらを食べ終えて、朝6時30分に出発する。外は小雨が降っているが、昨日よりはずっといい。
バスキンリバーのウッドデッキに立つと、川はかなり増水していて濁りもきつくなっていた。昨日までのポイントは増水で近づけない。どうやって釣りをするか、果たして釣れるのか心配になる。それでもデッキ周りは水流が少し緩くなっているので、急な流れを避けたサーモンが溜まっているかもしれない。取りあえず餌を流してみることにした。

私の朝食 増水しているバスキンリバー。水はデッキの床近くまで増えていた。

こんな快適なサーモン釣りはほかにはないだろう。足場のいいデッキから2メートルくらい先の川を流していく。まるでクロダイのヘチ釣りのようだ。川の底を小突くように餌を流していく。そのうち竿先が小刻みに揺れて魚信を伝えてくる。竿先の振れ具合を見ながら力強く合わせる。しっかり針掛かりしている。魚は激しく暴れるが、こちらは安定した足場の上を上流に下流にとついていけるのでバレる心配はない。やがて魚はネットに収まった。次に釣り人は白石さんに交代。9時までには二人とも定数の2尾を釣り上げた。

我々が釣りをしている間に何人もの釣り人が川の様子を見に来たが、川の流れを見て皆行ってしまった。まさかこんな足元で釣れるなんて想像もできなかっただろう。

シルバーサーモンのヘチ釣り。 良型のシルバーサーモンだ。

定数を釣り上げたので、下流の様子を見に行く。歩いてすぐの所で我々が「崖下のポイント」と呼んでいる場所は、昨年、一昨年と釣果に恵まれた所だった。しかし、そこは岸辺が増水していて、アプローチができなくなっていた。バスキンリバーを切り上げてアメリカンリバーに行くことにした。

左岸側が「崖下のポイント」だ。 滞在中活躍したトヨタのラブフォー。

小雨が相変わらず降り続いていた。川は橋の上流も下流も増水で、濁った水が太い流れを作っていた。沢山のピンクサーモンが川の両岸の流れが緩い浅瀬で列を作っていた。

上流から現れた熊 泳いでいる魚はなかなか捕まらない。産卵を終えて死んだ鮭も食べる。

一昨日と同じように、私はフライで、白石さんはルアーで釣りを開始する。しかし、いくらキャストをしてもピンクサーモンしか釣れてこない。今年は8月末から雨が多く、川の水量が安定していたせいか、ピンクサーモンの活性が高く魚体も美しいものが多い。

きれいな魚体のピンクサーモン。 豊かな流れのアメリカンリバー。

ドリーバーデンを釣りたくなり、バスキンレイクに行くことにした。車中で昼食を済ませてから、車をダウンタウン方面に走らせる。ロシアンリバー辺りで、車が数台路肩に止まっているのが見えた。河原に熊がいるのかもしれない。我々も近くの路肩に車を止めて辺りを見回す。いた! 熊は川の浅瀬で鮭を追いかけていた。鮭を一杯食べて丸々太ったコディアックブラウンベアーだ。河口に散在するクリークの中を、鮭を追いかけて走り回っていた。昨年と違い、100メートルくらい離れているので、安心して見ることができる。

これがコディアックブラウンベアー。 これだけ水があると、鮭はなかなか捕まらない。

バスキンレイクも増水していた。湖の吐き出し口には、遡上するシルバーサーモンをカウントするための簗が設置されている。これが今にも水没しそうになっていた。

雨に煙るバスキンレイク。 湖の吐き出し口に設置されたヤナ。下流側にもう1カ所設置されている。

トラウトロッドにミノーを付けてキャストする。いつもなら岸辺からキャストすると、良型のドリーバーデン(岩魚の一種)が入れ食いのようになるのだが全然アタリがない。ルアーを取り替えたり、リールの巻き方を工夫したりしても反応は全くなかった。魚は何処に行ってしまったのだろう。

アビ。 いつもならドリーバーデンが釣れる湖。

湖から少し下ったところに大きなワンドがある。ワンドは川が蛇行してできる大きな水たまりのようなものだが、魚が一時休むところでもある。そこに移動する。ワンドの流れがあるところをめがけてスピナーを投げる。何回かキャストするうちに、強いアタリがやってきた。あまり暴れないのでピンクサーモンかと思ったが、リールを巻いてくるうちに右に左に走り出す。上がってきたのは立派なシルバーサーモンだった。ここでシルバーを釣ったのは初めてだった。

バスキンリバーのワンド。 スピナーに食いついたシルバーサーモン。

魚をリリースして一服していると、白石さんが白頭鷲がいると教えてくれた。向かい側の山の中腹の小高い木の上に、一羽の白頭鷲が止まっていた。キーナイではよく見たが、コディアックではなかなか見ることがない。久し振りに見る白頭鷲だった。

湖のような巨大なワンド。 木にとまる白頭鷲。遠いのでこの画像が限界。

9月7日 水曜日

今日は海釣りの日だ。7時45分、港に係留してあるチャーターボート、U-RASCAL に集合した。釣り客は私たち日本人が2人、アメリカ人が6人の計8人だった。これに船長のクリス、助手のデービッドとレベッカの姉弟で、11人がボートに乗り込む。

港前の駐車場。釣り人の車で一杯だ。 港にはたくさんのチャーターボートが並ぶ。

8時に出船。港を出る前に、港内で今日の釣り餌にするニシンを釣る。桟橋のすぐそばで、サビキ釣りでニシンが入れ食いだ。5本の針に30センチくらいのニシンが2尾、3尾とかかってくる。これだけでも十分楽しい。クーラーはたちまちニシンで一杯になった。

サビキ釣りでニシン釣り。 クーラーには沢山のニシン。

次に、水産加工会社のある桟橋まで移動して、釣った魚を入れておく巨大なクーラーボックスに氷を補給する。砕いた氷で巨大なクーラーボックスが一杯になった。いよいよ港から出る。

助手達が手際よく作業を進める。 砕かれた氷でクーラーが埋まっていく。

港を出ると、船は全速力で走り出した。港を出ると北東に進路を変える。昨年は島の南西側の、パサギシャクリバーの沖合で釣りをしたが、今日はそちらの波が荒いので別の場所に向かうとのことだった。

全速力で釣り場に向かう。 島の間を船は抜けていく。

ナローストレイト(海峡)を通り、航程1時間ほどで SPRUCE ISLAND の沖合に到着した。遠くにはアフォグナク島も見えた。

雲が覆い被さる島。 遠くに島影が見えてくる。

船長は慎重にポイントを選定し、錨を降ろす。助手達は先ほど釣ったニシンを二つにぶつ切りし、タコのぶつ切りを加えて巨大な針に差していく。準備は万端だ。60号くらいのオモリをつけて、餌を投入する。水深は200フィートと船長が言っていた。

出番を待つ釣り人達。 餌の準備は整った。

6人が餌釣りでハリバット狙い、2人がジギングでサーモンやハリバットなどを狙う。釣り始めてすぐに、ジギングをしていたミズーリから来たアメリカ人に60センチくらいのマダラが釣れる。餌釣りの方にも次々にアタリがくるが、釣れるのはフロッグフィッシュと呼ばれる根魚ばかりだ。本命のハリバットはなかなかこない。

船長は場所を変えることにし、少し離れた所でハリバットを狙っている僚船の近くに船を移動した。僚船では良型のハリバットが釣れているのが見えた。早速釣り再開。私にやや小型のハリバットが釣れる。これでも巻き上げるのはかなり大変だ。巻いているときにはもっと大きいかと思ったが、このくらいの小型でもリールは重かった。

フロッグフィッシュと呼ばれていた根魚。 やや小型のハリバットを釣る。

お昼過ぎまでには、私も白石さんも定数のハリバット2尾を釣り上げることができた。定数を釣ってしまったので、船長に頼んでジギングをやらせてもらう。20センチくらいのジグを使って根魚を狙う。運が良ければサーモンもくるかもしれない。

ジグ(魚の形をしたオモリ。丈夫な針がついている。)を底まで落としてから、リールを使ってしゃくっていく。ハリバット釣りは待ちの釣りだが、これは積極的に攻める感じがして私は好きだ。カレー、マダラ、小型のハリバット、フロッグフィッシュなどが、誘いに応じて釣れてくる。

全員が定数を釣り上げたので、場所を移動してサーモンを狙うことになった。SPRUCE ISLAND の東沖まで走り、トローリングでサーモンを狙う。この時期、川にはシルバーサーモンが遡上しているが、海ではキングサーモン、シルバーサーモンが釣れる。2本の竿を出してスプーンで狙う。暫くしてアメリカ人がキングサーモンを釣り上げた。

船長がロッドをあおって合わせをくれる。 ランディングネットに収まったキングサーモン。

トローリングはダウンリガー(巨大なオモリ。ワイヤーで水深を調節する。)に大型スプーンの仕掛けを固定して、船の速力でスプーンが浮き上がらないようにする。アタリは竿にはっきり現れる。釣り人は交代でリールを巻き上げる。私の番がきた。キングが来たか?と思って巻いていると、船長のクリスがシルバーだよ、と教えてくれた。やがて、シルバーグリーンのきれいな魚体のシルバーサーモンが網に収まった。

ダウンリガーによるトローリング。 釣り上げたシルバーサーモン。

結局、サーモンはキングが2本とシルバーが1本の計3本だった。午後4時15分に沖上がりとなった。助手に魚の処理をお願いしていたので、彼は早速仕事に取りかかった。瞬く間に頭と骨、内臓が取られ、肉だけになった。船は40分ほどで港に戻る。

魚を捌く助手。手際よく内蔵を取り出し、フィレにしていく。 沢山の釣果とともに港に帰ってきた。

一日曇ったり小雨が降ったりしていたが、波も風もたいしたことはなく、この時期としては快適な海釣りだった。クーラーボックスは釣り上げた魚で、ほぼ満タンになっていた。

本島も雲に覆われようとしていた。 今日は釣果に恵まれたが、豊かなアラスカでもいつもこうとは限らない。

9月8日 木曜日

今日は大木さんがガイドをしてくれる日だ。今日と明日、ガイドをお願いしている。6時に宿まで迎えに来てくれた。
最初は、オルズリバーで釣り始める。筋子の塊を針にエッグループでくくりつけ、川の上流に投入する。すぐにアタリがきた。十分間をおいてから合わせたのだが、すっぽ抜けたように外れてしまった。餌を付け直して再び投入。餌が川底を転がるようにしているうちに、竿先にアタチリが伝わってくる。十分食いついた頃を見計らい、強く合わせる。今度は針はがっちり掛かったようだ。

夜明け前のオルズリバー。 早速1尾釣れる。取り込みにもだいぶ余裕が出てきている。

魚は流れの中で身を反転して、何とか釣り針から逃れようとしている。下流に走るのを竿をためてこらえながら、リールを慎重に巻き続ける。だんだんと岸辺に寄せてくる。良型のシルバーサーモンだ。

魚を岸辺の方に寄せてくる。こうすればネットがなくても取り込める。 見事なシルバーサーモン。

オルズリバーでもシルバーサーモンが釣れることは知っていたが、こんなに魚が濃いとは思わなかった。今までこの川では間違ったようにシルバーサーモンが釣れるという感じで、圧倒的多数のピンクサーモンに邪魔されるのが普通だった。それが今年は、8時までに二人とも定数を釣り上げることができた。

コディアックのロードシステムで我々が簡単にアクセスできる川は、バスキンリバー、アメリカンリバー、オルズリバー、パサギシャクリバーなどがある。私の感想では、数ではバンキンリバー、大きさではパサギシャクリバーではないかと思う。パサギシャクリバーのシルバーサーモンは魚体が大きく、釣り味は最高なのだが、必ず釣れるという保証はない。なので、バスキンやオルズで定数を確保し、その後釣り味を楽しむためにパサギシャクへ、というのが贅沢なチョイスとなる。

釣った魚をクーラーボックスにしまい、我々はパサギシャクリバーに向かった。分水嶺を越えて、島の南西部、パサギシャクリバーの河口近くが釣り場だ。川沿いに何人かの釣り人が見えた。

パサギシャクリバーの河口。時々あざらしが顔を見せる。 潮は上げ潮に入るところだ。

スピナーをセットして釣り開始。川の深みや流れの緩い所を狙ってキャストを繰り返す。暫くアタリがなかったが、辛抱強くキャストを続けると、やがてリールを巻く手に強い引きが返ってきた。フィッシュオン! 強い引きだ。ルアーを外そうと暴れ回るが、道糸は20ポンドの強度。切れる心配はないので、安心して巻き続け、段々と岸辺に寄せてくる。ピカピカの銀色をしたシルバーサーモンだ。

パサギシャクリバーでの待望のバイト。 見事な魚体のパサギシャクシルバー。

スピナーの色を変えて、またまたヒット! これも良型のシルバーサーモン。

昼食をオルズリバー近くのレストランで摂ってから川に戻る。潮は下げに入っているが、水中をよく見ると、何尾ものシルバーサーモンが目の前を遡上していく。

これは大物シルバーサーモン。 近くの牧場の牛がゆっくり川を渡っていった。今日の釣れ具合を見に来たのだろうか。

今度はフライで狙うことにした。自分で巻いた赤いシェニールのフライだが、釣れてくるのはドリーバーデンばかりだ。色をオレンジに変えてみる。一投目でアタリがきた。合わせるとフックは確実に掛かったようで、魚の強い反応が返ってくる。ティペットは5号なので切れる心配はない。ドラグを締め直し、川の中を走り回るサーモンを竿を矯めてこらえる。見事なシルバーサーモンだった。写真を撮ってリリースする。

赤のシェニールフライで釣れるドリーバーデン。 オレンジ色のシェニールフライで釣れたシルバーサーモン。

雨は相変わらず降り続け、気温もだいぶ下がってきた。午後4時半に納竿した。雨の降り続く川を後にして、ダウンタウンの宿へと向かった。

9月9日 金曜日

今日は釣りの最終日で、夜にはアンカレッジに移動しなくてはならない。朝6時に出発し、昨日と同じオルズリバーに向かう。辺りはまだ暗いが釣りを開始する。オルズリバーは相変わらず好調で、釣り始めてすぐにアタリがきた。たちまち良型のシルバーサーモンを釣り上げる。

手元がようやく見える中でキャスト。竿先の動きを注視する。 きれいな魚体のシルバーサーモンだ。

こんなに釣れるのに、他に釣り人はいない。風がないので川の水面は鏡のように穏やかだ。キャストした餌が、水面を割る音だけが聞こえてくる。貸し切りとなった広い釣り場で、二人とも8時までに定数を釣り上げる。

貸し切り状態の釣り場。 両手にずっしりと今朝の釣果。

餌釣りからルアーに切り替えた。金のブレード、橙色のボディのメプススピナーをキャストする。どうしてこのルアーで釣れるのか、全く理解できない。ブレードが回転して魚を誘う効果はあるかもしれないが、筋子にも小魚にも見えないこのルアーにどうして食いつくのだろう。でも釣れてしまう。

スピナーにヒット! 見事なシルバーサーモン。

釣れるシルバーサーモンは、オスは多少鼻曲がりが始まっているが、海から上がってきたばかりのきれいな魚体をしている。

見事なシルバーサーモンが釣れ続く。 これまた見事なシルバーのオス。

同じ色のルアーを使い続けるていると、段々アタリが遠ざかる。頃合いをみてルアーの色を変えるのが、ルアーフィッシングのこつだ。橙色から黄色、黄色から黒色と、色を変えながら釣り続ける。

ちょっとオーバーアクション。 やや小ぷりだが元気なシルバーサーモン。

午前10時、パサギシャクリバーの潮回りが良くなってきた頃なので、パサギシャクリバーに移動する。釣り味の良さは、やはり格別なので行かない訳にはいかない。

もうすぐパサギシャクリバーの河口だ。 河口から500mくらいの所がプールのようになっている。牛が見回りをしていた。

いつもの場所に車を止めて、釣り開始。スピナーですぐに一尾釣れたので、フライフィッシングに切り替える。前日に釣れた場所を中心にフライを流すのだが、アタリはいっこうに来ない。時々ドリーバーデンが釣れるだけだ。私のフライは、ドリーバーデンには人気があるようだ。フライはダンベルヘッドのシェニールを巻いたものだが、流れが早いので3Bくらいのスプリットショットを2つつけた。

潮が上がってくる川。 フライに食いついたドリーバーデン。

午後1時、満潮を迎えバイトも遠くなってきたので、オルズリバーに戻ることにした。川は穏やかで、朝のように鏡のような水面を保っていた。スピナーをセットしてキャストを始めるが、アタリはなかなか来ない。たまにピンクサーモンが釣れるだけだった。やはり早朝勝負なのか。

穏やかなオルズリバー。 黄色のスピナーに食いついたピンクサーモン。

もうシルバーサーモンは上流に行ってしまったのだろう、と思っているときに鋭いアタリがやってきた。昨日地元の釣具店で購入した蛍光黄色のスピナーに食いついたのだ。ゆっくりリールを巻いて、大事に岸辺に寄せてくる。これが島での最後のシルバーサーモンとなった。午後2時、納竿。

黄色のスピナーに食いついたシルバーサーモン。 対岸では近くの牧場の馬たちが、ゆっくり草をはんでいた。

宿に戻り、荷物をまとめる。宿の主人ニールに別れの挨拶をして、宿を出発した。空港に向かう途中でガソリンを満タンにした。レンタカーを返すときに、このレシートを提出しなくてはならない。驚いたことに空港の駐車場はほぼ一杯になっていて、空港ビルの外には待ち合わせの人が結構いるのが見えた。こんな光景は珍しい。

ほぼ満車の駐車場。 人が待合室の外まで溢れていた。

空港内に入って驚いた。待合室は人で一杯だった。聞いてみると、午後3時40分の便から来ていないということだった。私たちは午後7時15分の便だから、私たちの便の前に2便も滞っていることになるではないか。コディアック島周辺に濃霧が立ちこめていて、着陸ができないことが原因らしい。空港の係員に私たちの便の受付は何時から始まるのか聞いてみたが、6時半か7時頃じゃないか、ということではっきりしなかった。

6時30分から並び始める。列がいくつもできているので、自分の乗る便の列がどれなのか確認するのも大変だ。ようやく7時過ぎに受付でき、荷物を預けることができた。しかし、3時40分の便はまだ来ていない。昨日は搭乗開始した便が急遽キャンセルになっているので、まだまだ安心はできない。

待つこと4時間。午後11時に我々が乗る便がやってきた。アンカレッジから途中までやってきて、コディアックの天候が悪いので、キーナイ半島のホーマーで待機していたという。この便で日本から来た釣り客も見られた。午後11時15分、満員の乗客を乗せて飛行機は離陸した。

ごった返す空港内。 やっと来たアンカレッジ行きの飛行機。

9月10日 土曜日

疲れ切った人々を乗せた飛行機は、アンカレッジに12時15分頃に到着した。ホテル着午前1時。さっとシャワーを浴びてから、僅かの仮眠を取る。午前5時にホテルを出発。僅か4時間の滞在だった。出国手続きが順調に進み、このまま日本に帰れると思っていると、まだ一波乱が残されていた。

アンカレッジ空港Cターミナル7番搭乗口で、6時50分に搭乗が開始された。出発は7時30分の予定だ。私は寝不足だったので席に着いたらウトウトしてしまったが、辺りが騒がしくなったので目覚める。見ると、乗客が飛行機から下り始めているではないか。目的地に着いたわけでもないのに。周りの人の話では、飛行機が故障している、修理に時間がかかるということなのだ。

次のシアトルで乗り換え時間は、予定では2時間足らず。修理に1時間以上掛かっては乗り換えられない。アラスカ航空のサービスカウンターと対決するか、と思っていると、飛行機は1時間5分遅れで出発するので乗客は搭乗するようアナウンスがあった。間に合うかどうか、とにかく行くしかない。

飛行機は8時40分に離陸した。飛行機の中は落ち着かない時間を過ごした。次のデルタ航空の飛行機に間に合わなければ、シアトルで最低1泊することになってしまう。シアトルで飛行機はCターミナルに着く。我々が乗るデルタ航空はSターミナルから出発する。CターミナルからSターミナルに行くには、空港内の地下鉄を1回乗り換えて行く。十分な時間が欲しいところだ。

飛行機はシアトル・タコマ空港に13時20分に着陸した。我々の座席は後ろの方だったので、飛行機から出るのにも時間がかかった。地下鉄まで急ぎ、Sターミナルの地下駅から出発ロビーのある2階までのエスカレーターを駆け登っているときに、我々の名前を呼びながら最終搭乗を求めるアナウンスがロビーに響いていた。我々はSターミナル第8ゲートに駆け込んだ。

スイカのデザート付き朝食。

<編集後記>
コディアックにはここ何年か毎年出かけている。いつも問題になるのは、アンカレッジと島の間の飛行機だ。エラ・アビエーションは有視界飛行なので、天候が悪化するとキャンセルになることが多い。遅れても飛んでくれれば何とかなるが、飛ばないとそれから先の乗り継ぎの致命傷になる。
それを回避するには、アンカレッジでの滞在に余裕を持たせるしかない。あるいは天気の比較的安定している午前中の便で、その日のうちにシアトルまで行ってしまうのも一つの方法だ。コディアックでの滞在時間を最大に取ると、後の日程がとてもタイトになり、どこかでトラブルが起きるとすべてがダメになってしまう。痛し痒しという所だ。来年こそは何か工夫をしなくては。

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