2009年 夏 キーナイ


はじめに

今年のアラスカは、キングサーモン狙いでキーナイに行くことにしていた。キングなら第一遡上期の6月か第二遡上期の7月だが、仕事の都合もあるので、7月中旬釣行ということで、航空券、宿、レンタカーなどを手配した。

ところが、今年の遡上状況は芳しくなく、それでチャーターボートの手配はしないで様子を見ていたが、シップクリークなどのアンカレジ周辺の川では早々に終了を告げていた。しかし、サラリーマンには状況に応じた日程変更など不可能。そこで、今回は岸からのレッドサーモン (Sockeye) 釣りを主眼にして、現地の状況を見てキングサーモンを狙うことにした。

7月18日

ノースウエスト航空は、デルタ航空の完全子会社になった。マイレージなどで便利になった人もいるだろうが、デルタ航空の経営色が強くなり、合理化も一層進んだ気がする。成田空港のチェックインも自動チェックイン器が完全にメインになっていて、荷物を預けなければそのまま出国審査に向かうだけだ。

年々変わるチェックインカウンター 座席が少し良くなった

シアトルには予定より30分早く到着。ノースウエスト航空は南ターミナルで離発着するので、地下鉄に乗り、アラスカ航空が離発着するCゲートに向かう。Cゲートの待合所で日本人の三人組と会った。そのうちの一人に、ホームページを見ています、と話しかけられた。なんとも奇遇なことだが、彼らはレッドサーモン釣りで毎年キーナイに来ているそうだ。釣りのことをあれやこれや話しているうちに、1時間の待ち時間も瞬く間に過ぎた。

アンカレッジでエラ・アビエーションに乗り換え、キーナイ空港に予定通り到着した。レンタカーを借り出して、宿に向かう。

眼下に広がるキーナイ半島 半島の北側には湖沼がたくさんある

宿はキーナイのメインストリート、キーナイ・スーパー・ハイウェイに面していて、空港、釣り場、買い物のなどのアクセスがすこぶるよい。荷物を置いて、滞在中の食糧の買い出しに出る。買い物を終えてから、友人のゲーリーに電話して、水曜日の釣りの打合せをする。携帯電話の普及に反比例して公衆電話が街から姿を消し、公衆電話を探すのが年々苦労になってきている。
さあ、明日から釣りだ。今日は早く寝なくては。

アリシア・イーグルロック・ロッジ キーナイ・スーパー・ハイウェイ

ルピンが花盛り 花の名にちなんだ通りの名前

7月19日

朝7時に起床する。朝から小雨が降っていて、気温は7,8度くらいだろうか。朝食を済ませて、スウィフト・リバー・パークに向かう。公園の入り口で駐車料金6.4ドルを支払い、砂利道を公園に入る。

モーターハウス 日本ではキャンピングカーと呼ばれている 滔々とした川の流れ

道路沿いにはかなりの車が止まっている。乗用車、RVなど多彩な車が並んでいる。前回ここに来たときは、あいにくレッドサーモンは禁漁だったので、ほとんど車を見ることがなかったが、今年は遡上数も多いのでたくさんの釣り人が押し寄せている。

川への階段 河岸には人工の足場 これで河岸の植生を守っている

冷たい川に立ち込む釣り人 ファイヤーウィードも花盛り

混んだ釣り場では、軟弱な道具や仕掛けで釣りはできない。周りのひんしゅくをかってしまうだけでなく、魚を寄せきれない。セージの12番ロッドに9番のリール、ティペットは4号。すごい仕掛けだ。今回、フリッピングはしないで、フライを喰わせて釣ることにしていた。そのため、冬の間に釣れるフライを研究して、沢山巻き貯めてきた。フライを結び、キャストする。バックキャストはまったくできないので、オモリの重さで振り込む。

プランクトンを模したフライ コディアック仕様のフライ

セージ フライト12番 今回は大活躍した セージ フライト

しかし、何回キャストしてもバイトはまったくない。周りでフリッピングをしている釣り人は次々にレッドをヒットさせていて、魚が水を叩く音が景気よく聞こえてくる。フライの種類を変えたり、流し方を変えたりと色々工夫するがバイトはない。キーナイ川の水はキーナイ山脈の氷河を水源にしているので、雪解け(氷河解け?)の濁りがはいっている。そのため、水中の視界はとても悪く、フライが見にくいのかもしれない。

フリッピングに変えようか、もう少し粘ろうかと逡巡しながらも、ひたすらキャストを続けた。キーナイのレッドサーモンは、他の地域のものと比べて格段に大きい。それが周りでガンガン釣れているのを見てると、さすがに明日はフリッピングにしようかと思ってしまう。

夕方7時まで粘り通して納竿した。冷たい水の中に入って無理をしたせいか、かなり頭痛がしてきた。釣り道具を仕舞っている最中に、頭痛が強烈になってきた。帰り道、もうすぐロッジという手前で州警察が交通規制をしていた。先で事故があったようだ。仕方なく、来た道を戻り、スターリン・ハイウェー、カリフォンビーチ・ロード、ビーバー・ループを経て、宿に帰り着いた。頭痛は最高潮に達していた。夕食は食べられない。頭痛薬を飲んで、ひたすら眠る。明日は無理か。

7月20日

朝から雨が降ったり止んだりしている。予想通り、体調は回復していない。オレンジジュースを飲んでから、再びベッドに横になる。こんなことは前にもあった。前日のオーバーヒートが直接の原因だと思うが、アラスカに来るまで忙しい日々を送っていて、加えて連日の猛暑で寝不足が続いていた。体調が完全でないまま来たのが響いたのかもしれない。こんなときには一日寝ているしかない。覚悟を決めて、明日以降の必勝を期すしかない。

お昼頃まで寝たり起きたりしていたが、少し回復してきたようだ。あまり寝ていると夜に寝られなくなるので、散歩に出ることにした。センテニアル・パークの様子を見に行くことにした。

川沿いには大勢の釣り人がいた。ここは河原の近くに駐車場があり、岸辺もなだらかでとても釣りがしやすい。おまけにパブリックテーブル、誰でも使える魚処理台があって、とても便利だ。流れも緩やかで釣りやすそうだ。

広い河原 川沿いにたくさんの釣り人が釣りをしている

次にスターリンにあるモーガンランディングに向かう。前に一度来たことがあったが、その時は川への下り口が分からなかった。公園事務所の人がいたので、川への行き方を聞いたところ、駐車場の外れの道を下っていけばすぐに行けると教えてくれた。

坂道を下り、川まで行ってみた。何人かの地元の人が釣りをしていた。幹線道路からかなり離れているので、他の場所と比べると釣り人の数はぐっと少ない。また、この場所の周辺の川はボートからの釣りが禁止されているので、静かな釣りができる。でも、水深があるので、立ち込むと腰の辺りまで水がくる。

モーガンランディング 岸辺の釣り場

水深はかなりある 対岸ではサンダル履きで釣りができる

地元の人が球状のオモリを使っていたので、これを買うためにソルドットナの釣り道具屋に向かった。店はスターリン・ハイウェイがキーナイ川を渡った左側にある。オモリを買った後で川の様子を見に行く。

右岸側はリバー・テラスという民間のRVパークになっている。料金を払えば、川沿いで釣りをすることができる。ここはいいポイントになっていて、あちらこちらでレッドが上がっていた。

キーナイ川にかかる橋 右岸側のリバーテラスでは大勢の釣り人

川の左岸側を臨む リバーテラスの魚処理台

だいぶ元気が出てきたが、まだ空腹を感じるまでには至っていない。しかし、昨日からまともなものを食べていないので、ソルドットナの中国料理店で夕食をとる。明日は釣らねば。

7月21日

寝付かれないままベッドでごろごろしていて、結局一睡もできなかった。それでも体は休まったようで、体調は悪くない。午前3時、釣り支度をしてロッジを出る。スウィフト・リバー・パークはまだ薄暗い。しかし、川沿いには人工の足場が付いているので、暗くとも安全に釣りができる。もう少し明るくなるのを車中で待つ。

3時30分、何とか足許が見えるようになったので、ウエダーを穿いて川への階段を下る。驚いたことに、既に先客が何人もいて竿を振っていた。釣り人の考えることは誰でも同じで、少しでもいい条件で釣りがしたいのだ。

今日はこだわりを捨てて、フリッピングでレッドサーモン釣りに徹することにしていた。昨日、釣り道具屋で購入した球状の3/4オンスのオモリを使い、ティペットは4号のフロロカーボンライン90センチを結ぶ。フライはコーホーフライと呼ばれるもので、長軸の釣り針に少量のハックルを巻き付けたもの。通常のフライとはだいぶ趣を異にするが、レッド釣りでは最も定評がある。

<フリッピングの話>−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
フリッピングは、一応フライフィッシングの分野に属するようで、フライフィッシングだけが許される水域でもすることができる。しかし、使われるロッドはフライロッドだけでなく、スピニングロッド、キャスティングロッドなども使われる。また、リールもフライリール、スピニングリール、ベイトキャスティングリールなど多彩だ。エサやルアーを使わないという点だけが共通している。
この釣り方は、仕掛けが底を打つのに十分なオモリをつけて、オモリの重さでラインを振り込む。ややアップクロスに振り込み、竿一杯流してから空合わせをする。また振り込み、流して空合わせ、これを延々繰り返す。レッドサーモンは川に入ると何も食べないし、海でもプランクトンを食べていたから、普通のフライやエサ、ルアーで釣ることはできないとされている。それがどうしてフライで釣れるのか。それは、フライにかかるのではなく、フライにかけるというのが正しい言い方だろう。魚の遡上線を長軸の釣り針で横切らせる。魚の口と針が交差したとき、「フィッシュ オン!」となる。オモリの調節さえしっかりしていれば、後は振り込む回数と運が釣果の決め手になる。
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突然ひっかけられた魚は驚いて暴れ回る。ちゃんと口にかかっていれば、たいして暴れずに取り込めるが、背や腹などにかかると猛烈に暴れ、水面を割ってジャンプしたりしている。私も、4号のティペットが切られ、6号が切られ、ついには10号を使うようになった。

釣り人のマナーがよく言われるが、アメリカ人の遵法意識は思いの外高い。経験的に言えば、悪いのはドイツ人、最悪はフィリピン人、ヒスパニック系だ。隣で釣りをしていたドイツ人は、一日の制限尾数を破り、また釣り終わるまで魚の解体は禁止なのに、次々と捌いてしまう。にこにこしながら堂々とやっている。フィリピン人も強烈で、あからさまなひっかけ釣りをしている。何尾も釣り上げて誇らしげでもある。

フライを流していると、ふっとラインが止まった。反射的に合わせると強烈な反応が返ってきた。「フィッシュ オン!」。今までに3回もばらしているので、慎重に巻き寄せる。口にしっかりかかっているので、一気に走ることもなく、やがて魚が寄ってきた。近くの釣り人がネットで掬ってくれた。初めて2時間、待望の1尾目である。

ドイツ人三人組 一人は魚を捌く手だけが見える 本日の釣果

血抜きしてストリンガーにつないでから、再びキャストを開始する。暫くして、再び 「フィッシュ オン!」。竿は12号、ティペットは10号。口にかかっていればバレることはほとんどない。引きに耐えながら寄せてくると、また近くの人がネットで掬ってくれた。半日竿を降り続け、腕も疲れてきたので、ここで納竿した。明日もある。

魚を捌いてジップロックに入れる。帰路、魚処理の専門店に寄り、魚の冷凍をお願いする。冷凍だけなら1ポンド70円くらいでやってもらえる。帰る日に引き取ることにした。時間はまだ3時頃なので、センテニアル・パークに寄ることにした。

カリフォン・ビーチ・ロードを走り、キーナイ川にかかる橋を渡るときに、川でディプネッティングをしている人が見えた。橋を渡った左岸側はキーナイ・リバー・フラッツ・ステート・レクリエーション・サイトで、デイユースの公園になっている。車を止めてディプネッティングを見ることにした。

大きなネットをかついで、これからディプネット ボートからディプネットをすることもできる

ディプネッティングは、写真のように、川の中に大きな網を立てて網にサーモンが入るのをひたすら待つという、単純だけどおそろしく忍耐のいる釣りである。この釣りはアラスカ州の住民だけに許されている。水が濁っているので猪突猛進のサーモンが飛び込んで来るらしいが、大きな網を水量のある川に立ち込んで持ち続けるのは重労働のように見える。しかも、水はかなり冷たい。

互いの釣果を確認 潮は干潮なので、下ってくるサーモンを待つ

キーナイ川にかかる大橋 家族でディプネット

センテニアル・パークでは、例の特製フライをまた試してみたくなった。ここは岸が緩いので、かかっても容易に取り込むことができる。プランクトンを模したフライを結び、キャストする。流れが緩く水深もあまりないので、ペンシル型のオモリをつけて底近くを流す。しかし、何度流してもバイトはない。別のフライに取り替えて流すと、サーモンの稚魚が食いついてきた。大きな釣り針によく食いつくものだと感心しながらリリース。大人のサーモンには見向きもされないようだ。

行儀良く一列に並んでいる 大きな針にかかったサーモンの稚魚

車に戻ると、隣に車を止めていた韓国人から「アンニョンハセヨ」と挨拶を受けた。日本人です、と答えるとカップラーメンでもどうかと誘われた。アンカレッジから家族で遊びに来ているそうで、子供達にサーモン釣りを体験させたいと言っていた。寒空の中、暖かいラーメンはありがたい。韓国風激辛ラーメンをおいしく頂いた。

できれば保護者がかかって欲しかった 激辛ラーメン おいしかった

7月22日

朝6時、友人のゲーリーの家に行く。途中、ピラーズ・ステート・パークに寄る。ここにはボートランディングがあるので、バンクフィッシングが可能か下見したのだが、流れが強く水深もありそうで無理のようだった。

キング狙いの船が次々に出て行く 水深があり、流れも強い

友人のゲーリーは、キーナイ半島大学のディレクターをしている。2003年の夏の公開講座で知り合って以来のつきあいである。キーナイ川のほとりに家を建てて住んでいて、川岸には彼のボートが係留されている。今日はそのボートでキングサーモンを狙う。

玄関先で、ゲーリー、デーブ・アチソン、ドクター・ワーティンビーと再会する。彼らとも公開講座以来のつきあいで、久しぶりの再会だ。早速ボートに乗り込む。私はイクラの塊をつけて餌釣りで、他の三人はクィックフィッシュと呼ばれるルアーに、ニシンの切れ身を貼り付けたバックトローリングでそれぞれキングを狙う。

ゲーリーのボート 自宅の裏に係留してある ルアーにニシンをマジックスレッドで貼り付ける

今年のキングの遡上状況はあまり芳しくないと聞いていたが、川には沢山のボートが出ていた。確かアメリカも不況のはずだと思ったが、どのボートも定員の4人の釣り人を乗せている。

川沿いの家並み たくさんのボートが行き交っていた

餌もルアーもラインを30ヤードくらい出し、ジェットプラナーという道具で仕掛けを底近くに定位させる。流れよりもやや遅くなるようにボートの速度を調整しながら、ポイントをゆっくり下っていく。いくつかのポイントを流れ下ると、仕掛けを巻き上げ、ボートを上流に戻し、再び流れ下る。これを繰り返しながら、キングのバイトを待つ。

ポイントに集まるボート ラインを出してバイトを待つ

キングの一日の定数は1尾だから、釣れた人から竿を畳んでいく。だからボートの出ている竿を見れば、どのボートが何尾釣れているか知ることができる。どのボートもなかなか釣れていないようだ。

8時30分に納竿した。ゲーリー達はこれから仕事に行くようだ。皆多忙な中で私につきあってくれたのだった。好意に感謝し、再会を期して別れた。

服装に注目 真夏とは思えない 自宅まで階段を上る

ソルドットナ・ウェアハウスでランディングネットを購入する。これがないと、一人では魚が取り込めないことを痛感していたからだ。このネットを持って、かねてから行きたいと思っていた、スターリンにあるキーナイ川とムース・リバーの合流点に向かった。そこはキーナイ川で唯一、岸からキングサーモンを狙える場所とされていて、私はそれに挑む。

スターリン・ハイウェイを東に向かい、ムース・リバーにかかる橋を渡ったところで右折すると、すぐにアイザック・ウォルトン・ステート・レクリエーション・サイトに着く。ムース・リバーはここでキーナイ川に北側から合流している。高低差が少ないので、一見止水のように見える。流れが緩いので、遡上途中のサーモン達が暫しの休憩を取るところになっている。

アザック・ウォルトン・ステート・レクリエーション・サイト アザック・ウォルトン・ステート・レクリエーション・サイト

河口への道 奥がキーナイ川 手前がムース・リバー

釣り支度を整えて、合流点に向かう。いよいよフライフィッシングでキングサーモンを狙うのだ。過去に一度、アンカー・リバーで挑戦したことがあるだけで、ほとんど初体験に近い。12番のロッド、10番のリール、ティペットは6号にしてフライを結ぶ。シンクテッイプラインではなく、フローティングラインを使用しているので、オモリをつけている。

ロッドとネットを抱えて、いよいよ戦いだ 無心にフライを流す

流れがほとんどない上、南東の強い向かい風が吹いていた。この向かい風は、上流からの流木をこちら側に吹き寄せていて、水底にもかなり沈んでいる。キングは底を這うように遡上するので、フライは極力底を流していく。このため、根掛かりが多発した。オモリを軽くするとなかなか沈まないが、重くすると根掛かり。フライは向かい風で飛ばすことが難しい、とコンディションとしては最低だったが、辛抱強くキャストを続けた。

カモの親子 ムース・リパーからキーナイ川へ移動するカモの親子

暫く頑張るが、状況は良くならないのでギブアップとなった。しかし、このままではくやしいので、レッドサーモンを狙うことにした。キーナイ川に比べるとムース・リバーは水が澄んでいるので、フライの視認性が高い可能性がある。性懲りもなく例のフライを再び試してみることにした。冬の間、あれこれ想像して沢山巻いているので、簡単にはあきらめられない。

雄大なキーナイ川の風景 シギの仲間

ムース・リバーはロッシアン・リバーとともにキーナイ川に流れ込む最大級の支流で、サーモンの遡上も多い。例のフライを結び、ドリフトさせたり、トゥイッチングしたりとあれこれしてみる。しかし、やはりバイトは来ない。ほとほといやになる。近くでは、フィリピン人と思われる人が、スピニングロッドとリールで100ヤード近く遠投し、ぐいぐい巻きながら引っかけ釣りをしていた。見るのがいやなので、人のいない上流側に移動すると、また近くに寄ってくる。引き上げることにした。

川縁に立つ瀟洒なロッジ ムース・リバー上流を望む

帰る途中に、地元に人に教えてもらったインターネットができるレストランに寄る。夕食をとりながら、自分宛のメールをチェックした。すると、来る前に出しておいたバレリーから返事が来ていて、連絡先が書いてあった。電話しようかと思ったが公衆電話を探すのも面倒なので、自宅に直接行ってみることにした。

スターリン・ハイウェイ インターネットがてきるレストラン

バレリーとも2003年の公開講座以来のつきあいで、娘がホームステイしたりと色々世話になっている。 彼女の家は、オールド・キーナイと呼ばれる地区にある。かつてロシア人が最初に居留を始めたところで、ロシア正教会などが今でも残っている。あいにく彼女は不在だったが、ここは海に近いので、海の様子を見に行った。

クックインレットを臨む 海にはたくさんのディプネッター

この海はクックインレット、「入り江」ということだが、目の前には広大なアラスカの海が広がっている。海岸にはディプネッティングを楽しむ人々が大勢いた。サーモンは川への遡上を始める前は、河口近くの海岸をしばらく回遊しており、潮の動きなどのタイミングを見て遡上を開始する。水の中に網を突き立てているだけだが、見ているとポツリポツリとかかっている。

この車の人が1尾捕まえたのが見えた ひたすら冷たい海で待つ

家族でのピクニックを兼ねて来ている人も多いようで、お父さん、お母さんが交代で海に入っている家族も見られた。あいにく小雨交じりの天気で、風も冷たい中、辛抱強く海に立ち続けていた。

忍耐と運 どのくらい待っているのだろう

7月23日

6時30分からスウィフト・リバー・パークで釣り開始。既に大勢の釣り人が来ていて、アメリカ人夫婦の脇に入れてもらう。

今日も車が一杯 まだ辺りは薄暗い

今日はフリッピングだ。8時頃、初めてのバイトがある。かなりの大物だが、がっちり口にかかっているし、ティペットは10号なので切れることはない。強い引きをこらえながら寄せてくる。地元の人に掬ってもらった。オスのレッドだった。

小雨交じりの曇りなので、なかなか明るくならない 大型のオスのレッドサーモン

この釣りは魚を誘うという要素は全くなく、適切なオモリと仕掛けで何回キャストするかが全てだ。何回キャストするか、キャストを続けない限り釣れない。右手が疲れれば竿を持つ手を左に変えながら、ひたすらキャストする。途中、針が腹にかかってしまったまま釣り上げたが、これは規則違反なのでリリースした。仕掛けも竿も丈夫なので、スレでも上がってしまう。

長靴の大きさと比べてください 水中で頑張る釣り人達

10時頃、2尾目が釣れる。メスの中型だったが、これも隣の人に掬ってもらった。12時近くになり、制限尾数の3尾目がかかる。これは、ジャックと呼ばれる、通常よりも1年早く遡上したレッドだった。小さいながらも引き味は素晴らしかった。

定数まであと1尾 しっかりと口にかかっている

メスのジャック 本日の定数

型が小さいのでリリースということも考えたが、体力的に引き時と思いキープして納竿とした。川の辺で魚を捌き、帰りに冷凍専門店に持ち込んだ。3尾で13ポンド、肉だけの目方だが。その店で電話を借りて、バレリーに電話する。5時半にキーナイ・インフォメーション・センターで待ち合わせることにした。

ビジターセンター アラスカも今は花盛りだ

3年ぶりの再会だった。近くの喫茶店で、互いの近況を語り合う。息子のジェイクがオレゴンから帰ってきていて、今は漁師のバイトをしているということだった。それで、彼の職場を二人で訪問することになった。

会社は海岸沿いの崖の上に立っていて、海岸までは200段の階段を上り下りしているそうだ。丁度夕食の時で、会社では大勢の若者が食事をしていた。ジェイクとも久しぶりの再会だった。

その後、北キーナイ・スパー・ハイウェイの終点にあるキャプテン・クック公園に行く。岬の突端のような所だが、木々に覆われ、キャンプサイトもある。この付近は熊が頻繁に出没するらしいが、キャンプ場には大勢の人がキャンプを楽しんでいた。場内の掲示板には熊情報のメモが貼り付けてあり、最近では5月に出たようだ。こんな所でキャンプ、信じられない。

7月24日

いよいよキーナイ最終日になった。何とか体調を維持しながら楽しんできたが、あと半日となった。今日はスィルコック・クリーク・パークだ。この場所はメインストリートから離れていて、ちょっと見つけにくい。デイユースなので泊まっている人もなく、来る人は比較的少ない。公園に着いたら、車が一台止まっているだけだった。

公園の案内板 こんなに空いている

公園の外れから川への踏み跡を辿る。

この奥を左に曲がっていく しっかりした踏み跡が続く

スィルコック・クリーク 岸辺の階段が見えてくる

川には地元の三人組がいるだけだった。川沿いは岸辺の植生を守るために囲いがされていて、釣りはその囲いの外側でとなる。水深がある分流れが緩いので、昨日のオモリでは少し重い。ペンシル型のオモリに変えてフリッピングを始めた。

ほとんど釣り人はいない 釣り人は地元の三人だけ

始めて数投で、すぐにバイトがきた。しっかり口にかかっているのが見えたので、やり取りを楽しみながら、どうやって取り込もうか考えた。ネットを持って何とか入れようとしたのだが、なかなか元気ですんなりとはいかない。このまま長引くと、針の刺さり口が大きくなって外れてしまう。仕方なくラインを掴んで引き寄せようとした途端、ポッと外れてしまった。もう少し我慢が必要だったようだ。

今日は快調かな、と思ってキャストを続けたが、それから3時間。全くバイトが来なかった。何人かの釣り人がやってきたが、バイトがないのですぐ引き上げていく。こんなに広い釣り場も、今は私一人になった。独占できるのは嬉しいが、バイトがなくてはどうにもならない。12時30分、納竿した。夏のアラスカが終わった。

夏とは思えない私の服装 このペアで走り回りました 名前は調査中

宿に戻り、釣り道具を仕舞い、荷造りする。アンカレッジ行きの飛行機は5時25分発だが、早めにチェックインした。荷物を預け、もう一度キーナイ川を見に行く。川の近くに展望所があるので、そこに車を止める。降ったり止んだりの雨が、また降り始めた。展望所からは、キーナイ・フラッツと呼ばれる川沿いの平原を見ることができる。天気が良ければ、南に雪を被ったキーナイ山脈、北には遠くマッキンリーを臨むことができるのだが、曇り空でかすんで見えるだけだった。今夜はアンカレッジに泊まり、明日は湿度と熱気に包まれた日本に帰る。

遠くキーナイ山脈を臨む 雲の向こうにデナリ山(マッキンリー)

キーナイで何人かの人と話したのだが、近年、フィリピン人、韓国人がアラスカで増えているようだ。多国籍の人がいるのがアメリカの特徴なので、それ自体はどうということはない。ただ、釣りの世界では困ることが多い。何と言っても規則を全く守らない。
アメリカ人や欧米人は病的なくらい規則にやかましい。釣り方、魚種、制限尾数、禁漁期、場所、入漁料などについて、実に細かな取り決めがある。漁協の利益を守る日本の漁業規則と異なり、魚という限られて資源を有効に管理し、また周辺の自然環境を保全するためのものだ。しかし、フィリピン人などは全く意に介しない。
制限尾数3尾のところで、今日は6尾も釣ったと無邪気に自慢しているような人が増えていくことには一抹の不安を感じてしまう。いつまでも楽しい釣りができる環境が続くことを祈らざるを得ない。

大型バス1台を改造した巨大なモーターハウス アラスカの花 ファイヤーウィード

朝食はイクラを一杯かけて



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