2008年 秋 コディアック


シルバーサーモン

はじめに

ここ数年、仕事の都合で9月にしかアラスカに行けず、9月のアラスカといえばシルバーサーモン、シルバーサーモンといえばコディ アックということで、今回で3度目のコディアックである。離島故に途中の天候に飛行機が左右されるので、できればキーナイあたり でと思うのだが、あのシルバーサーモンのファイトを思い出すとコディアックに足が向いてしまう。

8月30日

ノースウエスト航空8便は、予定通り成田空港を飛び立った。いつものようにシアトルでアラスカ航空に乗り換え、アンカレジに 降り立つ。今回は北極圏の日帰りツアーに申し込んでいたので、今夜はアンカレジ泊まりだ。ツアーの航空券をアラスカ航空で受取 り、翌々日のコディアック行きエラ・アビエーシヨンのリコンファームを済ませる。エービスでレンタカーを借り出してホテルに向か う。

チェックインを済ませ、荷物を置いてからシップ・クリークに向かった。この川は、アンカレジの中心部から車で数分のところを流れ る川だが、季節に応じてキングサーモンやシルバーサーモンが遡上してくる。それこそ昼休みにサーモン釣りができるというところで、 いつも大勢の釣り人が押し寄せてくる。

シップ クリーク 水門を兼ねた橋

解禁になっている区間は、河口から1マイルも離れていないので、潮の干満の影響を強く受けている。川の辺に車を止めて様子を見る が、ちょうど干潮の時間でのようで水が引いて川底が見えている。魚影はない。流れのゆるいところでは、今年生まれたと思われる サーモンの稚魚が群れていた。後1,2年ここにとどまり、やがて海に出て行くのだろう。

干潮の川 道端の花

8月31日

午前4時半に起床して空港に向かう。6時、ほぼ満員の飛行機は北極圏に向けて飛び立った。やがて眼下にタルキートナ川が見えてくる。目を遙か向こうに移すと、雲から頭を出したデナリ山が見えてきた。デナリの曇天率は80%と言われている。私は 2回チャレンジしたが、いずれも曇りで山を見ることができなかったが、今こうして空から見ることができた。山の所々に幾筋もの氷河が流れ出ている。

早朝の空港 これから北極圏に 雲の向こうのデナリ山

途中、フェアバンクス空港に立ち寄る。ここで半数の乗客が降り、新たな乗客が乗り込んできた。厚手の上着やコートを着こ んでいて、この街の寒さがしのばれる。飛行機はやがて飛び立ち、ユーコン川が眼下に見えてくる。大河が蛇行しながら西に流れていく。何人もの日本人が、この川をカヌーで下っているのを思い出す。

ユーコン川 蛇行する川

ユーコン川を過ぎると、アークティックサークル、北緯70度の北極圏に入る。この一体にはブルックス山脈が 東西に広がり、北極海の冷たい空気を衝立のように遮っている。山の北側だけに雪が積もっている。

ブルックス山脈 ブネックス山脈

飛行機は、さらにプルドゥーベイに立ち寄る。ここはアラスカを縦断している石油パイプラインの始発地点で、アンカレジ からの陸路の終点である。アメリカの軍事施設もある。ここで5,6人が下り、数人が乗り込んできた。

沼沢地のプルドゥーベイ プルドゥーベイの空港

9時40分、厚い雲をくぐり抜けて極北の街、バロウに到着する。小さな空港は到着した人、迎えの人、これから乗り込む人でごった返している。バロウから北に人の住む町はない。海の向こうには北極が待っている。

バロウの街並みが見えてきた バロウ空港

私は空港には 「 ○○観光御一行様 」 というサインボードを持った、現地旅行会社の人が迎えてくれるものと思っていたが、狭い空港のどこにもそのような人はいない。空港の外にも出てみたが誰もいなかった。しばらくすると 「 ツンドラ・ツアー TUNDRA TOURS 」 と書かれた、使い込んだ紙を持った太ったお兄さんがやってきた。どうやらこの人についていくようだ。観光バスに乗り込む。かなり旧型のバスで、お兄さんが運転手とガイドを兼ねている。ツアー客の中に、栃木県鹿沼市から来ていた日本人の夫婦が1組いた。

空港から一歩出れば、そこは極北の町。8月の末だというのに日本の真冬のようで、気温は7,8度だが冷たい風が襟元から吹き込んでくる。ザックから防寒ジャンパーと雨具のズボンを取り出して身につける。

最初の観光地は、この町から世界各地までの方向と距離を示す指導標だ。北の果てと世界の主要都市との距離が分かる。

世界の各地への指導標

記念撮影が済むと、いよいよ 北極海だ。海岸は砂浜が続き、北極からの冷たい波が打ち寄せている。海水に手を浸してみたが、ものすごく冷たい。あわてて手を拭いて手袋をつけた。

北極海を臨む 北極から打ち寄せる波

着ている服に注目 砂浜が続いている

車窓から墓地を見学。できてから50年のまだ新しい墓地とのことだった。途中、巨大なアンテナがいくつも立っている所が あった。おそらくここでテレビや電話の電波を受信し、各家に配信しているのだろう。

極北の墓地 アンテナ群

お昼は、ほとんどのツアー参加者はこざっはりとしたレストランに行ったが、私達はOSAKAという名前の寿司屋に行く ことにした。名前のあまりの俗っぽさに、興味本位で行くことにしたのだ。客は私達二人だけ。握りと巻物をそれぞれ注文した。にぎり30ドル、巻物19ドル。 バロウは海に面しているが、漁業はほとんど行われていない。だから寿司ネタのほとんどは、アンカレジなどから空輸している はずだ。でもできはなかなかで、特に巻物は、ハルサメを揚げたものを粉状にして巻き寿司にまぶしてあって、不思議なおい しさだった。大阪寿司がメニューにないのにOSAKA、経営は韓国人だった。

OSAKA寿司 巻物一人前

午後のツアー開始まで時間があったので、町の中をぶらついた。バロウの人口は4300人で、主な産業は天然ガスだ。 小さな町ながら小学校から高校まである。通り沿いには、かつての主要交通手段のソリが、朽ちかけて積み上げられていた。 今は、普段は車、冬はスノーモビルが移動手段になっている。

バロウの街並み 積み上げられたソリ

午後のツアーは民族博物館の見学から始まった。博物館には、地元民イヌピアット・エスキモーの昔の生活の様子や生活用具が展示して あり、地元の人が民芸品を製作販売していた。

運転手兼ガイド 民芸品を売っていたおばさん

午後2時から、イヌピアットの若者達による民族舞踊が始まった。木枠に鯨の胃の皮で作った太鼓と彼らの歌声を伴奏に、昔から 伝わる踊りを披露してくれた。新しい世代に昔からの伝統が、確実に伝承されているのを実感した。

若者の踊り 若者の踊り

若者の踊り 鯨の皮で作ったトランポリン

踊りが終わると、見学者も交えてのトランポリンが始まった。アザラシの皮で作ったトランポリンには持ち手が付いていて、大勢の 人がタイミングを合わせて持ち手を強く引くことで、中央に乗った人を高く舞い揚げる。かなり力を入れて引かないと飛ばせないので、かなり疲れるが参加者一同頑張る。
(下の2枚の写真は、大橋様のご厚意による。)

見事なジャンプ すごい高さ

博物館を出て、バスはポイント・バロウのLRS ( Long distance Raider Site ) に向かった。その後、鯨の骨で作ったモニュメントに寄った。鯨の頭の骨で作ってある。
博物館 モニュメント

End of the road 町から延びる道もここが終点。といっても中心地から15分だが。海岸にはアザラシが打ち上げられていて、 カモメの餌になっていた。
道の行き止まり 死んだアザラシ

下の骨組みだけの写真は、ウミアックと呼ばれる鯨捕り用の船の骨組み。全長5,6メートルでアザラシの皮を張り付けて 使う。この小さな船で船団を作って鯨を捕まえる。その様子は星野道夫の著書が詳しい。
ウミヤック 鯨の骨のモニュメント

バロウで見かける車のほとんどには、フロントグリルから電気のプラグが伸びている。スーパーやホテル、レストランの駐車 場にはコンセントが常設されている。冬になると駐車の際に電気をつないでエンジンが凍結するのを防ぐのだ。

一日観光を終えて、6時に空港で解散となった。各自で搭乗手続をする。バロウ空港を午後8時過ぎに飛び立った。帰りはフェアバンクスに再び立ち寄り、アンカレジ空港からホテルに 戻ったのは11時頃になった。短い極北の旅だった。

車のフロントに注目 夕闇のフェアバンクス

9月1日

4時半起床。荷物を車に積み込み空港に向かう。車を返して、エラ・アビエーションで搭乗手続を済ませる。搭乗口近くの店でコーヒーを注文し、昨日買ったパンで朝食を済ませた。6時、予定通りに搭乗が開始され、6時半離陸する。機内は釣り客や帰宅する人でほぼ満席だ。

7時50分、コディアック空港に到着。途中はずっと雲で視界不良だったが、空港は雨だった。8時30分、レンタカーを借り出し、荷物を積み込んで出発する。ホテルのチェックインが午後2時なので、ホテルには向かわずに、途中の川で釣りをすることにしていた。

コディアックに着いた 空港の受付

9時、空港から近いアメリカンリバーで釣りを開始する。道端に車を止めて、スーツケースからウエダーを取り出し、釣り支度を整える。川にかかる橋のたもとに降り立つと、雨のせいかかなり増水していた。ロッドケースからフライロッドを取り出し、リールをセットする。9番ロッドとリール、ラインは9番のウエイト・フォワードのフローティングラインで、ティペットは3号(0X)だ。フライは昨年実績のあったピンクのサーモンフライを結ぶ。
川にかかる橋 増水したアメリカンリバー

この川は、シルバーサーモンは少なく、ほとんどはチャムサーモンかピンクサーモンだ。ナチュラルドリフトでフライを流すと、雨で魚の警戒心が薄いのか、チャムサーモンがすぐにフライに食いついてくる。オスは全部リリースして、型のよいメスのチャムを3尾キープする。釣りが終わって、魚を捌くと腹にはイクラがぎっしり詰まっていた。

型のよいチャムサーモン イクラが一杯

ガイドの大木さんとホテルの近くの中国料理店で6時に落合う。今回で3度目のガイドをお願いしている。シルバーサーモンの遡上状況や最近のコディアックの様子などを尋ねる。

明日の朝の待合せ時間などを打ち合わせて散会し、我々はウォルマートに買い物に行くことにした。ところが途中で道を間違えて、その道の終点にあるホワイトサンド・ビーチという公園に着いてしまった。折角なので海岸の景色などをみて車に戻り、走りかけたとき、対抗車線に止まっている車から運転手が窓から顔を出して、こちらに向かって何か叫んでいる。

「熊がいる。」。言われた方を見ると、すぐそばの小さなクリークに1頭の熊がいるではないか。コディアック・ブラウンベアだ。そのクリークを遡上してきたピンクサーモンを狙っているのだ。こちらとの距離は30メートルくらい。熊の足を考えると車窓見学しかない。私は車をUターンさせて、先ほどの車の後ろにつく。二台の車は熊の動きに合わせて移動する。やがて熊は茂みに埋もれ見えなくなった。

私たちは引き上げることにしたが、そこに別の一台の車がやってきた。若いカップルでデートに来たようだが、彼らは近くに熊がいることを知らない。私は車を彼らの近くまで寄せて、車から出てきた二人に声をかけた。「すぐ近くに熊がいる。」。二人はあわてて車に戻った。3度目のコディアックで、初めて熊と遭遇できた。あいにくカメラを忘れてしまい、画像はない。残念。

9月2日

7時15分、大木さんが迎えにきてくれた。目的地はバスキン・リバー。昨年釣った場所のやや下流で、川の端にベンチがある。今年のコディアックは、バスキン・リバーとパサギシャック・リバーが好調とのことで、特にバスキン・リバーがいいという。

エッグループの釣り針の上にスピンNグローを装着し、イクラの塊を餌にして第1投。斜め上流から下流にドリフトさせると、クッ、クッというアタリ。きた。でもここで合わせては針掛りしない。イクラが口の中に入る間を見計らってから、ガツンと合わせる。しっかりと針がかかっている。何と第1投からかかってしまった。魚はすごい勢いで上流、下流へと逃げ回る。一年ぶりの感触を味わいながらも慎重に巻き寄せる。体長75センチのメスのシルバーだった。

バスキンリバー キャスティング

すぐに白石さんにもシルバーがヒット。それから僅か1時間くらいのうちに、二人とも定数の2尾を釣り上げる。大木さんの話どおり、今年は濃い。
強烈な引きに耐える 見事なシルバー

今日の成果 二人の成果

定数を釣り上げたので、雨に濡れた体に暖を取るために、港近くのカフェに行く。熱いカフェ・ラテを飲むうちに人心地ついてきた。晴れていれば快適だが、雨が降ると気温がぐっと下がり、冷たい川に立ち続けると体の芯まで冷えてくる。

昼までに間があったので、オルズ・リバーに行くことになった。昨年、ここでシルバー、チャム、ピンクが良く釣れたのだが、今日はアタリがない。フライを変えたり工夫をしてもさっぱりなので、昼食にすることになった。大木さんが用意してくれたおにぎりと春雨スープを車内で頂く。おにぎりの中身は、地元の紅鮭だった。

オルズリバー

エネルギーを充填してから、バスキン・リバーの上流にあるバスキン・レイクに向かうことになった。相変わらず雨は降り続いていた。湖には靄がかかり、シルバーやピンクがあちこちでライズしていた。
バスキンレイク バスキンレイクからの流れ出し

シルバー狙いで色々なフライやスピナーを使ってみるが一向にアタリが来ない。狙いを ドリーバーデンに変えることにした。大木さんがプラグを使ったらどうか、といってくれたので、プラグを拝借して釣り始める。10センチくらいのミノーにアクションを加えて巻き寄せるとアタリが出始めた。ポイントと思われるところでは、ほぼキャスト毎にアタリがあり、良型のドリーがかかる。すべてリリースしたが、十分楽しませてもらった。

ドリーバーデン 日本の岩魚に近似 ドリーバーデン

雨が相変わらず降り続けるので、5時頃納竿した。明日の天気はどうだろうか。

港まで戻り、大木さんにお願いして、魚をボートランチの公共処理台で、クリーニングとフィレにしてもらった。白石さんは航空便で送ってもらうことにしたが、私はアンカレジで購入したクーラーボックスに入れて持ち帰る。6時過ぎにホテルに着く。
公共の魚処理台

9月3日

6時15分、辺りがまだ暗い中を出発した。バスキン・リバーは明るくなると釣れなくなるので、早目の勝負が肝心だ。昨日好調だった場所で釣りを開始する。

いつもの朝食 自分で用意 早朝のホテル

サーモンの釣り餌としてイクラは最強最適だ。なぜイクラで釣れるのか、諸説紛々で定説はない。元々サーモンは遡上を開始すると何も食べなくなる。釣った魚の内臓を見てみても、胃は退化していて中には何もない。海では小魚やイカなどを捕食していたはずで、イクラは食べていない。まして同じ種族の卵では共食いだ。不思議というしかない。

本日1尾目 見事な魚体

釣りをする二人 早朝の成果

今日も1時間足らずで定数を釣り上げる。ここが釣れる事が知られてきたのか、時間を追って釣り人が増えてくる。昨日のカフェでコーヒーブレイクをとる。休憩を取った後、オルズ(Olds)・リバーに向かった。いつものポイントでキャスティングを繰り返すがアタリはこない。二人が釣りをしている間に大木さんが昼食の用意をしてくれた。具だくさんのチキンスープにご飯を浸したチキン雑炊だ。オカズにキンキを炭火で焼いてくれた。久しぶりに晴れた河原でおいしいご飯が食べられる。至福の一時である。
キンキの炭火焼き カモメが2羽

昼食後、岬のはずれで海に流れ込む小さな川へ向かった。シルバーは少ないものの、ピンクがいつも真っ黒に群れているらしい。しかし、今日は魚影はほとんど見えず、死にかけたピンクがゆらゆらと泳いでいるだけだ。エッグフライでキャストしてみたが、くたびれたピンクが2尾と、ドリーバーデンが1尾釣れただけだった.

岬の川 美しい魚体のドリーバーデン

ピンクがヒット 余裕の竿捌き

一度シルバーにフライが背掛かりしたが、物凄い勢いで下流に疾走して釣り糸が切れてしまった.釣果が望めないのでアメリカン・リバーに移動することになった。途中、とても景色のいい所があったので写真に収める。今日は天気がいい。今までのコディアックで一番いい天気かもしれない。

岬から町の方向を望む ファイヤーウィードが秋の訪れを知らせている

この川は全体に浅い川なので、深みがあるポイントは限られている。いつもの場所でキャストするが、アタリはまったくない。大木さんが河口の方に行ってみませんか、ということで車で移動する。
アメリカンリバー アメリカンリバー とにかく天気がいい

ここぞというポイントでキャストをしていると、白石さんが騒ぎ出した。駆けつけてみると、何とアザラシが現れて、あやうくルアーを引っ掛けてしまうところだったらしい。ピンクサーモンを追って、海からここまで来たのだ。下流の方を見ると、つるつるの頭が三つ水面に浮かんでいた。
河口 アザラシが顔を出す

アザラシに魚が怯えたのか、しつこくロングキャストを繰り返すがアリタは来ない。

もくもくとキャストを繰り返す キャストすれどもアタリなし

処理場で魚を捌き、ホテルまで送ってもらう。夕食をいっしょにということで、7時に迎えに来てもらうことにした。夕食は海を見下ろす、オールドパワーハウスという日本人が経営するレストランで、私と大木さんはちらし寿司、白石さんは銀ダラ定食を注文した。

コディアックということで特に名物料理があるわけではないので、極力現地のものを食べたいとなるとこのようなメニューになる。コディアックの様子を聞きながら、楽しい夕食となった。この日、夜の零時でタラ漁が禁漁になるということで、眼下を何隻もの漁船が帰港して来る。今年はタラが不漁ということで、どの船の喫水線が浅い。大木さんの勤めている水産会社の船も不漁で、タラの代わりにカレイを取ってきているそうだ。この後中国に輸出し、そこで加工して世界中に再輸出される。日本にもそのエンガワが、回転寿司のネタとして使われているそうだ。ガイド料を精算して、ホテルまで送っていただいた。

9月4日

天気予報が外れて今日も晴天だ。雨のほうが釣りには適しているが、気分的あるいは体力的には晴れの方が嬉しい。6時に起床してバスキンリバーに向かう。釣り場に着いて、私が身支度を整えているうちに白石さんが1尾かける。持ち帰らないのでリリースする。私にもエッグサッキングリーチで1尾くる。これはキープ。そのうちにアメリカ人3人組がやってきて釣り始める。

アメリカ人の釣り人 ピンクかな

彼らのうちの二人の仕掛けは、大きな玉浮きを使って、ジグヘッドと黄緑色のラバーを組合せたルアーをドリフトさせるという単純なもの。それでも、そのうちの一人は、僅か20分のうちに2尾のシルバーを釣り上げた。仲間から 20minute Fishing と言われていた。

定数を釣り上げた彼は、これからマグドナルドまで朝食を買いに行くという。私たちもどうかと聞かれたので、躊躇しながらもコーヒーを二つお願いした。釣り場までコーヒーを出前してくれるなんて最高だ。

やがて、ハンバーガーの袋とコーヒーを5つ持った彼が帰ってきた。代金の支払いを申し出たが、おごりだという。ご馳走様でした。

そのうちにフィリピン人一家がやってきた。彼らの釣り方、というか魚の捕らえ方はスナッギング、いわゆる引っ掛け釣りだ。頑丈な竿とリールに太い釣り糸、大きなオモリを付けた針を魚めがけて振り込み、勢いよく引き上げて魚を引っ掛ける。何回振り込むかが勝負だから、傍らでバシャ、バシャと始まると、気が散って釣りにならなくなる。引っ掛けは違法なので、針には申し訳程度の毛糸が巻きつけてある。混んできたので移動することにした。

アメリカン・リバーで橋の上から様子を見たが、魚影はない。オルズ・リバーにも行ってみたが、数尾見えるだけでとても釣りにならない。時計を見ると昼が近いので、パンを食べながらパサギシャック・リバーに向かうことにした。

河口近くの駐車場に車を止めて川を見ると、川には何人もの釣り人が釣りをしていた。潮は干潮の終わりのようで、まもなく下げ止まりだ。河原に腰掛けて、暫し潮が上がってくるのを待つ。やがて潮が上がってきたようで、上流にあるプールのような所で、二人の釣り人がそれぞれシルバーを掛けているのが見えた。シルバーが上ってきているのだ。

パサギシャックリバー河口部 パサギシャックリバー

見学だけのつもりで来たのだが、目の前で魚が釣れていては釣らない訳にはいかない。すぐに釣り支度を整えて釣り始める。しかし、ルアーを色々変えたり、釣り方を変えたりして頑張るが、アタリはこない。プールのあちらこちらで盛んにジャンプしているし、水中を泳ぐシルバーの姿が見えているのにヒットしない。フライに20センチくらいのカジカが、何回も食いついてくるだけだった。

おいしそうなカジカ 釣り場から振り返ると見事な滝

午後5時、港の処理場で魚を捌く。ここで大事件が勃発。一気に余裕がなくなったので写真はないが、話だけ付記したい。

シルバーを3枚におろしてジップロックにしまい、作業を終えて車に戻った。その瞬間、車の鍵をトランクルームに置いたままでトランクを閉めた光景が、頭の中を走った。そうだ、鍵を閉じ込めてしまったのだ。レンタカーなのでスペアキーは最初からない。こんな町外れの港でどうしよう。

宿やレンタカー会社などの電話番号はすべて車の中。私の財布も。港の管理事務所のような建物が見えたので行ってみたが、それは博物館でしかも閉館していた。まいった。車の所まで戻ると、処理場で別のグループが魚を処理していた。恥を忍んで船長とおぼしき人に助けを求める。彼は作業の手を休めて話を聞いてくれたが、どうしていいか分からないと言う。

彼の奥さんと思われる人が、小銭をあげるから例の博物館に公衆電話があるだろうから行ってかけてみたら、と言ってくれた。電話番号が分からないというと、彼女のタウンマップを貸してくれた。とにかく行ってみる。

しかし、アメリカも携帯電話の先進地。公衆電話は撤去されていて、取付跡が残っているだけだった。戻って彼女にそのことを話すと、丁度港から帰る途中のカヌーのインストラクターをつかまえて、いきさつを話し始めた。すると、インストラクターの彼女が我々をホテルまで送ってくれることになった。二人の親切にただ感謝、感謝。

ホテルに戻り、ホテルの人に訳を話すと、早速レンタカー会社に電話を入れてくれ、係の人が15分ほどしたら現場に来てくれるという。そこで、現場に戻るにはタクシーを呼ばなくてはと思っていると、何と彼女の娘の車で現場まで送ってくれるという。送ってもらい、再び現場に戻る。

さほど待つ間もなく、レンタカー会社の人がやってきた。スペアキーでトランクルームを開けると、真っ先に車のキーが目に飛び込んできた。「情けは人の為ならず。」、この言葉を身にしみて感じられた1時間だった。感謝、感謝。

夜9時に大木さんがガイドをした2日分の写真をCDにして持ってきてくれた。今日1日の釣果と車のことを話した。大木さんはコディアックの人はいい人ばかり、ニューヨークだったら大変でしたね、と言っていた。

9月5日

6時起床。今日は一日釣りをしてから、夜アンカレジに向かうことになっている。明日朝一番の便でもアンカレジ発シアトル行きの便に間に合わないので、どうしても前日にはアンカレジに入っていなくてはならない。昨年、悪天候でコディアック発の便が飛ぶかどうかわからず、とても不安な経験をしていたから、毎日のように天気予報を確認していた。今日の予報は、曇り時々晴れ、一時雨の予報だった。

今日も、まずはバスキン・リバーに向かう。昨日の三人組はすでに来ていたが、今日は誰も釣れていないようだった。そのうちフリッピングをしていた一人にシルバーがきた。私のフライにはピンクサーモンはかかるが、シルバーはこない。1度アタリがあったが、フライ毎持っていかれてしまった。

10時まで粘った後、アメリカン・リバーに転戦した。橋の上から魚の姿を探したが、昨日より増えているもののイマイチという感じだったので、カヌーのインストラクターが話してくれたサロニー・クリークに向かうことにした。

コディアックの美しい景色 今日も天気に恵まれた

彼女の話では、ピンクに混じってシルバーが遡上していくのがカヌーから見えたという。クリークに近づくと、誰かが橋の上に車を止めて何かを見ていた。何だろうと思って、同じように車を止めて見ている先を目で追うと、クリークの河口近くに熊がいるではないか。浅瀬になった所でピンクを捕まえようとしているところだった。

遠くに熊が見える 熊とともに移動

河口は砂利が堆積して浅瀬になり、遡上していく魚が捕りやすい。熊もそれを知っていて、盛んに鮭を追っていた。そうち1尾を捕まえ、口に咥えて川から上がり、岸辺で食べ始めた。見ていた人に聞くと、コディアックブラウンベアだと答えてくれた。三度目の訪問にして、二度も熊を見る機会に恵まれた。
鮭が川を渡っている アップの限界

12時にバスキン・レイクに着く。今回最後の釣りだ。まずは、湖を見ながら昼食をとる。こんな長閑な時間を過ごせるのも、後数時間だ。また一年働かないとここには来られない。

フライ・フィッシングにこだわっているので、まずはフライで狙うがアタリはこない。 色々なフライを試すが、効果はない。スプーンやスピナーに変えてキャストすると、ドリーバーデンがスレ掛かりしてくる。キャストするたびに掛かってくるので、相当な数のドリーバーデンが鮭の卵を狙って集まっているのだろう。

しばらく粘ったが、サーモンのヒットがないので、釣り道具をしまい、ウエダーを脱いで車に積み込んだ。来年までこれらの道具を使うことはないだろう ( 11月に北海道のアメマスをやるのでウエダーは使います。)。

帰りがけにバスキンリバーを覗いてみた。いつもの場所には二人の若い米兵が釣りをしていた。その上下流にも大勢の釣り人がいて、一生懸命魚を引っ掛けようとしていた。

ホテルに戻り、冷蔵庫の冷凍室からサーモンを取り出して、クーラーボックスに魚を移す。50リットルのクーラーが魚で満タンになった。荷造りを終えて車に積み込む。途中で給油を済ませて空港へと向かった。

泊まったロシアン・ヘリテイジ・イン ホテルの花

少し早いが空港でチェックイン。クーラーが66ポンドで重量超過になる。定量は50ポンド(約23キロ)までなので、超過料金75ドルを支払った。兎に角、荷物を預けてしまえば一安心。昨年は、風雨が強まる中で欠航になるかと思われた飛行機が、30分近く遅れて到着した。アンカレジから来るので、向こうが荒天でも飛行機は飛ばない。

6時50分の搭乗開始時間になっても、飛行機は来ない。どうかしたか。しかし、その10分後、飛行機の爆音が聞こえ、やがて姿が見えてきた。よかった。帰れる。




<イクラ作り>
帰宅後、持ち帰った鮭の卵からイクラを作った。鮭の卵は、チャムサーモンのものとシルバーサーモンのものとの2種類あるが、作り方は同じ。

まずは

冷凍にして持ち帰ったので、冷凍室から冷蔵室に移して解凍する。お湯がたっぷり必要なので、鍋とヤカンで湯を沸かす。適温は65度くらい。お湯の用意ができたら、魚卵をその中に浸す。冷たい魚卵が入るので水温が下がるから、適当にお湯を足す。そのまま10分から15分くらい放置する。魚卵を覆っている卵膜が、縮んできて外しやすくなる。卵膜を外すには根気がいる。卵を潰さないように手でやるのがベストだが、お湯が熱いので箸を使っても良い。

新鮮な魚卵 卵膜をきれいに取り除く 一番手間がかかる作業だ

次に

一応卵膜を取り終わったら鍋のお湯を捨てて、新しいお湯を注ぐ。水温は同じ。小さな膜のカスが何度でも浮いてくるので、時間があれば2,3回繰り返したい。でも、作業の傍らでお湯をキープし続けるのはしんどい。適当なところで魚卵をザルに移して水を切る。

お湯を取り替えてカスを取り除く ザルにあけて水を切る

いよいよ

水を切ったイクラは乾燥しないようにラップでもかけて、熱が冷めるまでしばらく放置する。これまでの作業を初めてした時は、魚卵が白く変色するので茹でてしまったのではないか、失敗かという不安にかられる。でも冷えるに従いイクラはだんだん元の色に戻っていく。実に不思議な光景だ。冷えたイクラを醤油漬けする。醤油だけでもよいが、だし汁、酒、みりんなどを加えるとコクが出てくる。一晩寝かせればできあがりだ。
温度が下がるにつれて元の色に戻っていく イクラの醤油漬け

頂きます

土曜日に作業して、一晩寝かせたイクラの醤油漬けを、そのまま熱いご飯にかけても最高だ。今回は、スパゲッティを茹でて、シルバーサーモンのムニエルとイクラを添えた和風パスタにした。大根をすり下ろしてイクラが転げ散らないようにしている。この親子パスタ、イクラをたっぷりかけるのがおいしさの秘訣。おいしく頂いた。

鮭がおいしい




バロウで見たワタボウシ

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