2004年初秋

1 コディアックへ

そして平成16年8月27日、私たちは再びアラスカに来た。エラ・アビエーションの中型双発飛行機でアンカレジから1時間20分、クックインレットを越えてコディアックに着いた。今回は仕事の都合で飛行機の手配が遅れたために、いつもの格安航空券が完売状態で、四方八方手を尽くしての航空券の獲得だったから、ようやくという感慨ひとしおだった。

Kodiak harbor

2 海外での釣りについて

いつも思うことなのだが、観光旅行に対しては色々な情報や格安航空券、パック旅行などが充実しているのに、釣りということになると途端にすべてが窮屈になる。釣りのパック旅行はほとんどないし、あっても国内では数社が催行しているだけで、ルート的に格安航空券は極めて限られ、釣りの情報に至っては現地発のものしかなくなってしまう。

一度でも行っていれば多少の判断はつくものだが、初めてでは右も左も分からないというのが実情だ。ホテルの場所でさえはっきりしないことが多い。まして、釣り宿やガイドに至っては、それこそ出たとこ勝負というのが実態だ。ホームページや事前のメールのやり取りなどを通じて、相手はどんな人か、私たちに親切に対応してくれるかなどを推察しているのだが、やはり実際に会ってみてでないと分からない。

釣りについても、貸し道具、現地の送迎、出船時間、魚の処理など、相手にしてみれば当たり前のようなことでも、当方にしてみれば、一つが違っても大きな問題になってしまう。日本に持ち帰るために魚を入れる容器は現地で手配可能なのか。それはワックス付きダンボールなのか発砲スチロールなのか。昼食はどうなるのか、予約金がいるのかいらないのか、精算は現金かカードかなどなど、これらのことはガイド一人一人で違うから、すべて事前に、あるいは現地で確認して、初めて楽しい釣りができるようになる。

今回のコディアックでの釣りは、今までとは違って、自分達でやる部分が多かった分だけ楽しい釣りだった気がする。コディアック唯一の日本人ガイド、大木さんという素晴らしいガイドとの出会いが大きく影響しているのも事実だ。ガイドがボートでポイントに案内し、用意してくれた釣り道具に餌をつけてもらい、ひたすらあたりを待つというこれまでの大名釣りではなく、無論、貸し道具ではあったが、自分でよさそうな場所を見つけてキャストしたり、取り込みまで自分でするというかなり能動的な釣りになった。

アクロバティック・サーモンという異名を持つシルバーサーモンとの出会いも強烈だった。これは今までの私のサーモン釣りへの考え方を大きく変えてしまった気がする。それまで釣りの時期や場所を選定するときに、頭のどこかにいつもキングサーモンへのこだわりがあって、キングが釣れる時期、キングが釣れる場所を意識して、あるいは無意識に優先してきたように思う。

もちろん、当面の目標は岸釣りでキングを釣ることであり、そのための準備も着々と進めてはいるが、シルバーとのあのバトルを思い出すと悪くない、十分楽しめる、というのが実感だ。餌でもルアーでもフライでも狙うことができ、ランディングも何とかなる。食べてもキングと何の遜色もないし、何より一日の制限尾数がキングの倍の2尾、場所によっては3尾まで釣ることが出来る。私の選択肢が何倍にも広がった。

3 ピンクサーモン

今年は偶数年ということで、ピンクサーモンの爆発的な遡上の年だった。これはピンクサーモンが産卵後1年くらいを川で過ごし、やがて海に下り、豊じょうなアラスカの海で小魚を食べて大きくなり、1年後あるいは3年後に故郷の川に遡上するという生活を規則正しく続けているからだろう。

ピンクサーモンは日本ではカラフトマスあるいはせっぱりマスと呼ばれている鮭で、日本人とも馴染みが深い。日本にも毎年鮭の遡上する川は、北海道の忠類川をはじめ、青森の奥入瀬川、馬淵川、岩手の安家川、閉伊川、津軽石川、気仙川などたくさん有るが、釣りができるくらいたくさんの数の鮭がのぼる川は少ない。調査捕獲という名目でやっと2,3の川で、大勢の釣り人がひしめきあいながら釣りをしているのが現実だ。それもごく最近のことだが。

4 コディアックの海釣り

8月28日、コディアックでの釣りは海釣りから始まった。メタルジグでしゃくりながらキングサーモンやハリバットを狙う。キングは中層なので、水深10メートルから15メートルをしゃくる。当たりはガッツーンとくるので、そこからが戦いになる。ハリバットは底魚なので、ジグを着底させてから糸ふけを取るようにしゃくっているとガツ、ガツ、グーンとやってくる。

Metal jig

一度だけリングコッドをかけたが、はじめ根がかりのように動かない。途中暴れるということはなかったが、とにかく重かった。最後にキングがヒットしたが、40ポンドの道糸を切られて姿を見ることもなく逃げられてしまった。

Ringcod

5 フライアウト

8月29日、今日はフライアウト、飛行機で隣のアフォグナック島に釣りに行く。コディアックの周辺はシルバーの遡上はまだ少なく、ガイドの大木さんがここならと選んでくれたのが、アフォグナック島のリトニックリバー(アフォグナックリバー)だった。

Flyout

着水した場所から歩いて30分ほどでポイントに到着。川のそこここでピンクサーモンが真っ黒に群れている。ルアーはピクシーのグリーンを使ったが、スピナーでも釣れる。川に入ったピンクは身が水っぽいということで、地元の人は食べず、もっぱらスポーツフィッシングの対象になっている。しかも、ピンクはスクールフィッシュ(群れで移動する魚)だから、群れにあたると誰でも簡単に釣れてしまう。

Bunkfishing in Afognak

ルアーを投げ込めば、背中や尾などにすれがかりしてしまうので、確かに引き味は強烈だが、釣趣的にはイマイチとなる。はじめのうちは、日本ではなかなかお目にかかれない大物が釣れたと大喜びしていたくせに、いくつも釣れだすと、またピンクだなどと言い出す始末。人間とは何とぜいたくなものか。

午後4時、迎えの飛行機が来たので、白石さんが釣った唯一のシルバーを抱えて帰路についた。この日の夕食は、大木さんの推薦で Old Power House という日本食のレストランで焼きそばを食べる。美味!。

6 待望のバンクフィッシング

8月30日、いよいよバンクフィッシングの日だ。キャスティングから取り込みまで自分でやる。釣れるかどうかは実力次第だから、楽しみも格別というもの。上げ潮の時間まで待つ間に、ダウンタウンからも近いアメリカンリバーで肩慣らし。スピナーやフライでピンクサーモン、チャムサーモン(白鮭)が釣れた。シルバーは見えるが釣れない。

目的地のパサギシャクリバー Pasagshak river に潮止まり直前に到着。河口は目と鼻の先という所で、釣りを開始する。八木橋さんが早々とイクラ餌でジャック(シルバーの2年魚)を釣り上げる。私はフライで挑戦したが、なかなかヒットしない。目の前の地元の人がフライで釣れているのに。来た!と思って上げてみると、なんとカレイ。フライでカレイを釣ってしまった。

昼食後、この川の少し上流に移動し、全員イクラ餌でシルバーを狙う。サーモン釣りでイクラは最強。ミディアムアクションのキャスティングロッドに16ポンドのライン、4/0のオクトパスフックをエッグループで結び、イクラの塊をつけて川に放り込む。イクラの塊が川底をバウンドするように竿先を動かしていると、ガツ、ガツ、ガツーンときて、ラインが一気に持って行かれる。それからが戦いだ。

スピニングリールは限界付近で耐え、ラインはぎんぎんと糸鳴りがしている。ドラグをかけてもラインはどんどんでていき、やがて止まる。ポンピングを繰り返し少しずつ少しずつ岸に寄せてくる。銀色に輝く魚体が見えてきた。ランディングネットは持参していなかったので、浅瀬に誘導していき、そしてずり上げる。最後まで激しくバトルするシルバーサーモン釣りは、バンクフィッシャーマンにとって最高の釣りかもしれない。

コディアックのシルバーは9月が本番。2週、3週頃にピークを迎える。私たちは幸運にも遡上の始まりに間に合った。ピンクの何百匹もの群れの中に何尾かのシルバーが混じっている感じだったが、パサギシャックリバーでのシルバーとのやり取りは忘れられない思い出になった。

Group picture

7 ガイドなしの釣り

コディアックでの最終日は、昨日のアメリカンリバーのポイントで、完全なドゥーイットユアセルフの釣りをした。ダウンタウンから車で20分、道路端に車を止めて歩いて0分のところでサーモンが狙える。川をのぞくとピンク、チャムがたくさん泳いでいるのが見える。8番のフライロッドに8番のフローティングライン、その先に20ポンドのリーダーを結び途中にスプリットショット(錘)を付ける。フライはピンクのエッグサッキングリーチを選んだ。

釣り方はレッドサーモンと同じ。上流にフライを振り込み、ドラグがかからないように竿先を送り、竿幅一杯まで流したら空合わせをして、また上流に振り込む。何回か振り込む内にぐぐっと重くなる。かかった。フライフィッシングではすれがかりはほとんどないから、フライは確実に口にかかっているはずだ。シルバーは一気に下流に向かって走り出し、8番ロッドは満月にしなる。

Fish on !

キーナイ川のレッドサーモンをこのロッドで釣っていたから、折れることはないと安心していたが、油断は出来ない。ドラグを少し強くして、浅瀬に浅瀬にと誘導する。20ポンドのリーダーは絶対に切れないと確信して、後は一気に岸に引き上げた。15ポンドくらいのメスのシルバーだった。

チャムサーモンも魅力的なサーモンだった。すでに婚姻色が出始めていたが、型としてはシルバーより大きめで、その分引きも強い。日本の白鮭だが、遡上を始めたものは味が落ちるらしく、大木さんがキープには乗り気でなかったので、1尾も持ち帰らなかった。本当はどうなんだろうか。

Chumsalmon

天候と釣況に恵まれたコディアックの釣りは、一人当たり40ポンドのワックスボックス3箱という予想以上の好成績を残し、私たちはアンカレジ行きの飛行機に乗り込んだ。

釣行記録一覧に戻る