初めてのアラスカ


1 カナダ出張

どうしてアラスカに通うようになったのか、今もってはっきりしない。日本人釣り師にはあまり馴染みのない場所であり、釣りのガイドブックやパックツアーがあったわけではない。かすかな記憶を辿っていくと、6年前のカナダ出張がきっかけだったような気がする。

ナイアガラの滝 コロンビア氷河

平成12年10月、トロントに始まってバンクーバーまでの出張は、オンタリオ州、アルバータ州などの州政府や関係機関を一人で訪ねる、かなり骨の折れる旅行だった。事前の資料収集に励んでいると、ふと、イエローナイフというところで、1メートルを超えるレイクトラウトが釣れる、という記事が目に飛び込んできた。

トラウトというからには鱒属の魚だろうが、日本では尺岩魚が釣れれば最高という私の釣りの経験では、到底理解の出来ない世界がそこにあるようだった。イエローナイフはノースウエスト準州というコロンビア大氷原のさらに北にある町で、10月末の町は雪の中だったろう。

ボウ川 バンフ

帰国してから、翌年は是非行きたいと考えて、さらに情報収集に励んだが、当時の私の旅行技術ではかなり厳しい行程だった。さらに、雪解けが6月からで、6月中旬までは雪解けによる増水で釣りは難しいことが分かってきた。結局、イエローナイフは高嶺の花となったが、この資料収集の過程でアラスカの情報に触れることができ、アラスカでもサーモンやハリバットといった大物釣りができるらしいことが分かってきた。でもアラスカにはどうやっていくのだろう。

サーモンとスティールヘッド

2 キーナイへ

私のアラスカはキーナイ半島から始まった。なぜキーナイなのか。当時、といっても4年前だが、アラスカの日本語情報は、日本にあるアラスカ観光局のパンフレットかインターネットによる検索情報に頼るしかない。ガイドブックは「地球の歩き方 アラスカ」だけで、この状況は今も変わらない。

たまたまインターネットで検索した情報で、ソルドットナB&B(ベッドアンドブレックファスト)で釣りパックをやっているという体験記に出くわしたのが、アラスカでのサーモン釣りにのめりこんだ最初のきっかけだった。オーナーのスティーブは日本で6年間働いていた経験があり、日本語が話せる。観光旅行と違って、宿のこと、釣りのこと、その他もろもろをすべて英語で交渉していくのは本当に大変なので、とても心強かった。一も二もなく、この宿に決めた。

ソルドットナロッジ

平成13年5月29日、成田からノースウエスト航空でシアトルへ。シアトルでの乗換へは地下鉄に乗ると友人から聞いていたので、果たしてどこでどうするのか不安で、何度も航空会社に確認していたが、意外とスムーズにできた。シアトルで乗り換えてアンカレジへ。途中、ブリティッシュコロンビアの山々が6月だというのに雪をかぶっている風景が飛行機の窓から見えたとき、いよいよこれからアラスカか、と感激していたことを思い出す。

Knik Arm

アンカレジからはエラアビエーションの小さな飛行機に乗り、ターナゲイン・アームを越えて湖沼群が見えてくるとキーナイ半島に入る。空港は平屋の小さなビルで、降りてくる客の半分は釣りの客で、残りはアンカレジに買い物や仕事で行って来た人々だ。荷物を受け取ると、次はレンタカーの手続き。外国での運転は2度目だが、右側通行はまったくの初めて。交通規則や標識は日本で一応勉強してきたが、それでも実地となると緊張感はいやがおうにも高まってくる。車はアラスカ初体験の中年3人とスーツケース3つを乗せて走りだした。アラスカサーモン釣りの始まりだ。

3 初めてのキングサーモン

キングサーモンは、日本名はマスノスケ、太平洋で釣れる鮭の中では最大で、釣りの記録では97ポンド(約43キロ)が世界記録で、私たちが泊まっている宿の前を流れるキーナイ川で釣られている。

キーナイ川

この年、5月下旬のキーナイ川はキングの遡上にはまだ早く、私たちはキーナイから車で20分ほどのカシロッフ川で、生まれて初めてのサーモン釣りに挑戦することになった。

  前日の打合せで、朝4時にボート乗り場集合ということになっていたので、3時に起床し、朝食も早々に済ませて、まだ真っ暗の宿を出発した。ボート乗り場には、ガイドのフレッドが待っていて、挨拶をしてから船に乗り込んだ。今回は、シアトルに研修留学中の警察庁職員の斉藤さんも加わり、4人の釣り客とフレッドの5人を乗せた手こぎボートは、雪解け水で冷たく少し濁ったカシロッフ川を一気に下り始めた。

Fred

このカシロッフ川は、キーナイ氷河を水源としたタスツメナ湖から流れ出る川で、クックインレットに注ぎ込む。5月の中旬からキングサーモンの遡上があり、キーナイ川でのキングが始まるまでの大切な釣り場となっている。

カシロッフ川

フレッドは、クイックフィッシュ (Kwick Fish) という16センチくらいの巨大なルアー(プラグ)に、ニシンの切れ身をマジックスレッドというやり方でくくりつけた。このルアーをラインに結び、30ヤードから40ヤードくらい出してあたりを待つ。ルアーはヘッド全体がリップになっているので、水流を受けてたちまち潜りだし、激しく揺れながら川底を泳ぐ。その振動は、竿を持つ手にびんびん響いてくる。キングは川底から30センチの間が勝負といわれ、4つのルアーがこの間を泳いでいる。

最初のヒットは白石さんにきた。全身が緊張と興奮に包まれているのが、端で見ていても伝わってくる。無事取り込んだときには、足が興奮で震えていた。型は約20ポンドでカシロッフ川のアベレージ。続いて斉藤さん。そして私に本日最大の24ポンドがきた。まだ婚姻色が出ていない銀色と深緑色の混じった色をしているメスのキングだった。カシロッフ川で生まれた1個のイクラが、アラスカ湾の鰊や鰯をたらふく食べてここまで大きくなり、そして帰ってきたのだ。

Kasilof river

4 全員釣れた!

八木橋さんに1尾きて、全員制限尾数の1日1尾を釣り上げたので、早々と釣り上がり。河口から約3マイルのボート乗り場には、一番乗りだった。各ボートは釣り客が全員制限尾数になるまで頑張るので、一番早い帰還ということは、ガイドの腕が卓越しているということにほかならない。フレッドは潮回りを判断して出船時間を早くした上に、ここぞというポイントでは粘り、大人5人の乗ったマッケンジースタイルのローボートを2つのオールで自在に操っていた。彼のおかげで、初めてのサーモン釣りで全員がキングサーモンを釣るという幸運に遭遇できたのだった。そして、このことが私のアラスカ釣行熱に火を付けてしまった。

本日の釣果 全員定量 キングを捌く

全員勢揃い

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