タスマニアのトラウト釣り


●12月23日

シドニー空港の国内線専用ターミナルから飛び立ったカンタス航空のジェット機は、シドニー上空を大きく旋回した後、タスマニアに向けて進路を南西にとった。

Sydney

 タスマニアはオーストラリアの南にあり、日本の北海道ほどの大きさの島だ。人口20万人のホバート、10万人のローンチェストンなどいくつかの都市があるが、それでもあわせて50万人に満たない住民が、牧畜を中心にした農業と、豊富な鉱物資源に頼って暮らしている。

 飛行機は約2時間の飛行の後、ホバート空港に降り立った。ローカル空港らしく、建屋は平屋で、到着口に出迎えの人々でごった返していた。その中に、大柄なオーストラリア人の中でも一際背が高く、顔中髭にした青い長袖シャツのロジャーがいた。ロジャーはレッドタグというタスマニア・トラウトツアーを主宰するガイドで、今回の私のパートナーである。

初対面の挨拶を済ませると、空港の有料駐車場に停めてある彼の三菱パジェロに乗り込んだ。私の荷物は、釣り竿からウエダーまで借りることになっているので、さほど重くないスーツケースひとつ。それを荷台に積み込むと、車は彼のケビンに向かって走り出した。

クリフ・トップ・ケビン

ロジャーのケビンはクリフ・トップ・ケビンという名前のとおり、ホバート空港から車を飛ばして1時間ほどの、道路も舗装道路から未舗装道路になり、羊がのんびり草をはむいくつもの大きな牧場を通り過ぎ、最後は四輪駆動でなければ走れない道を進み、やっとたどり着ける丘の上にある。回りをユーカリの林が囲み、眼下には今通ってきた道がうねうねと続く丘陵地帯が広がっている。

Cliff Top Cabin

このケビンは、電気も水道もない。電気がないから、テレビや電話など外界とつながる装置は一切なく、音といえばユーカリの葉をゆらす風のそよぎと周りで暮らす動物たちの鳴き声が聞こえるだけだ。

唯一の例外は、ホバートとローンチェストンを結ぶ貨車専用鉄道を日に数回往復するディーゼル機関車のエンジン音と、このケビンがある丘を貫くトンネルに入る前に鳴らされる警笛の響きだけ。何もないここでは、この機関車の到来がロジャーの楽しみになっている。

生活するのに必要な水は、屋根に降る雨水を大きなアルミの円筒形の容器に貯められるようになっていて、これを浄化して使っている。直接飲んでも問題なく、結構おいしかった。ロジャーが、ここは世界一空気がきれいだと言っていたから、雨水も問題ないのだろう。来る途中に見た農家の多くも、同じような装置があったのを思い出した。トイレもこの雨水を利用して水洗だった。さすがだと感心する。

調理などに必要な火力は、小型のプロパンガスを使用していた。二口の小さなガスコンロを使って、ロジャーは器用に調理している。ケビンの中の明かりも、ガスランタン。これが結構明るく、不自由を感じることはなかった。

シャワー

日本を出発する前から気になっていたのはお風呂のことだ。水道も電気もない中でどうするのか、何回か電子メールで確認したのだが、簡易シャワーがあるから大丈夫という話しだったのだ。

果たして、ロジャーお手製の夕食、もちろんデザート付き、を終えシャワーという段になった。ロジャーはやかんでお湯を沸かし始めた。

シャワー室はケビン1階の西側角にあり、洗面台、浴室とつながっている。浴室の上の方に円筒形のバッグのようなものが吊してある。ロジャーはお湯が沸くと、このバッグを吊しているロープをゆるめて手元まで下ろし、この中にお湯を入れ始めた。さらに水を加えて満タンになったバッグをロープを引いて吊り上げていき、頭より少し高いところで、ロープを固定した。バッグの下にはジョーロのようなものが取り付けてあり、これをひねるとお湯が出てくるのだ。

かくして簡易シャワーができあがった。電気がなくても、水道がなくても体を洗うことができるのだ。必要は発明の母というが、生活の知恵に脱帽。唯一の問題は、お湯の量が限られていて、追加はないということ。気持ちよくお湯を出したら、2,3分でなくなってしまう。少しずつ出して効率よく身体を洗わないと、石けんをつけたままで終了になってしまう。それと、お湯がどんどん冷めてしまうから、バッグにお湯を入れたらすぐに入浴するということ。夏のオーストラリアでも、ここタスマニアの丘陵地は朝晩結構寒い。お湯が冷めないうちに、そして素早く身体を洗うことが、ここでのシャワーの最良のテクニックだ。

Bedroom upstair

ぎりぎりで身体を洗い終え、ジャージに着替えて、2階の寝室に上がった。2階にはやや急な梯子で上がる。そこにはダブル、シングルなど6つのベッドがあり、私は窓際のダブルベッドに潜り込んだ。明日からの釣りを考える間もなく、タスマニアの静寂に包まれていった。

●12月24日

ワライカワセミ

ケビンの朝はオウムの水浴びとワライカワセミの鳴き声(笑い声)から始まる。ケビンの台所から見えるところに給餌台がある。ロジャーがそこに小さな水盆を置き水を満たしておくので、毎日たくさんの鳥が水飲みと水浴びにやってくる。

In the morning

逃げ出したペットではなく、本物の野生のオウムが毎朝水浴びにやってくる。一方、丘の麓の谷筋にはワライカワセミがたくさんいるようで、一日中鳴いて(笑って)いる。人間の笑い声にとてもよく似ており、夜の谷間に響く笑い声は不気味なものだ。

シリアルに牛乳を入れて食べている間に、ロジャーは手早くスクランブルエッグとベーコンを焼き、トースト、コーヒーの朝食ができあがる。客は私一人なので、のんびりマイペースで食べる。食べながら今日の日程を確認する。

マッカリー川

8時30分にケビンを出発。一路北上し、本日最初の釣り場であるマッカリー川に向かう。今日はクリスマスイブ、多くの人々はクリスマスホリデーを楽しんでいるはずだ。ハイウエー沿いにクリスマスの飾りがいくつも見られる。男二人はひたすら北を目指す。

マッカリー川は、ゆるやかな丘陵地を流れていて、いいポイントは私有地を通らなければいくことができない。事前に所有者に使用料を払っておいて、自分で柵を開けてそこを通っていく。もちろん道などはなく、草原を上り下りしながら川に向かっていく。

水は緩やかに流れ、空は抜けるように青く白い綿雲が流れている。この空と雲の色はアラスカと驚くほど似ている。遠くでは羊たちが草を食べていた。

Beautiful Landscape

ロジャーは5番のフライロッドにリールを装着し、ティペットは1号か0.8号くらいだった。最初のフライはロイヤルウルフ。16番くらいの針かな。ペースト状のフロータントをフライに擦り込んで、釣りが始まった。岸沿いの澱みや深場ではライズが見られる。

二人はそっと川に近づき、膝を折って魚に見られないように気を配る。私はフライ・フィッシングはほとんど初心者。上手にキャスティングができないので、フライをポイントまでうまく振り込むことができない。力を入れすぎてラインが水をたたいたり、手前に落ちたり、あげくはバックキャストで草に引っ掛けたりして、折角のチャンスを自分で壊している。ロジャーが怒っているのではないかと気掛かりだ。

ブラウン ヒット!

ポイントをいくつか移動していると、きまぐれな幸運の女神が魚をフライに導いてくれることがある。ライズ! でもアドレナリンの分泌がそれよりも早く私の身体を駆け抜け、ビシッと早合わせ。空しくフライだけが宙を舞う。ロジャーからも合わせが早いとアドバイスが飛んでくる。

それでも下手な鉄砲も数打ちゃ当たるの通り、何回かの空振りの後、やっとヒットさせることができた。ラインを注意深くたぐり、ロジャーがネットに入れた。オーストラリアで初めてのブラウントラウト。体長は25センチそこそこだが、体側の黒や赤のマークが美しい。出会いを感謝した後、優しくリリースした。

Fish on!

ランチは、車の近くに椅子を並べて、サンドイッチ。パンをナイフでミートローフが挟めるように切り、レタス、ミニトマトなどを加えてできあがり。オレンジジュース、コーヒーを飲みながら食べ始める。食後はクッキーを食べながらロジャーと談笑。キャスティングの仕方などのアドバイスを受ける。

Lunch

エリザベス川

午後からは場所をエリザベス川に変え、フライもブルー・アダムス、グラスホッパーに変える。風は朝からかなり吹いていたが、午後からさらに強まり、キャスティングが益々難しくなった。追い風のときはかなり楽にできるものが、向かい風になると、普通のキャスティングでは風に負けてしまい、ポイントまでフライを飛ばせない。素早く強く振り込むようロジャーから指示が飛ぶ。フォワードキャストはパンチを繰り出すように振り出す。

結局、この日はあの一尾のみで後が続かずに終了。いいのが釣れたら夕食にする予定がだめになったとロジャーがぼやいている。明日こそ食べてやるぞ。

●12月25日

ロックスタイル

6時30分に起床し、7時30分にケビンを出発。今日は昨日行ったエリザベス川だ。風は相変わらず強いが、今回は川に入って釣り上がるので、多少風の影響が少ないように思われた。

ライズがないので、ロジャーはグラスホッパーの下にティペットを足してニンフを取り付けた。二つのフライで水面と水中の両方を同時に攻めようという訳だ。このような一度に複数のフライを同時に使う方法は、ロックスタイルLoch Styleというそうで、スコットランドが発祥の地だそうだ。ロックスタイルでは3つ付けるとロジャーが言っていた。一番上のドライフライがインジケーター(目印)の役目を果たす。しかし、フライの重さがそれぞれ違うのでキャストは簡単ではない。

風に負けないように早くスイングすると下のフライが遅れてくるし、ゆっくりスイングするとバックキャストが下がってしまう。結局はラインの流れを見ながらのキャストを心掛けることになる。早めに、強めに、そして着水はジェントルに。

このスタイルに変えた途端、ブラウンがヒットした。下のニンフに食いついたきたのだ。慎重にラインをたぐり、30センチくらいの美しい斑点があるブラウンを釣り上げた。この1匹は夕食の食卓にのぼることになった。

Fish on!

ランチ

一日の釣りは、朝2時間くらい釣りをしてからコーヒーブレイク、それから2時間釣りをしてランチ。食後2時間くらい釣りをしてコーヒーブレイク、最後に2時間くらい釣りという感じで、休憩の時はディレクターチェアーに座り、オレンジケーキとコーヒーを頂く。まさに大名釣りだ。

Chairs

一日500オーストラリアドルのガイド料は安いとは言えないが、片道100キロ以上の送迎付きの大名釣り。しかもマンツーマンのガイドで、手作りフライ使い放題だから文句はありません。

翌日は午後4時にはケビンを出てホバート空港に行かなくてはならないから、少しでも長く釣りをするために明日は早く起きようということで、今日は早上がりをしようということになった。それでも時計は午後6時を回っていた。

クリスマス・ディナー

前日より1時間早く夕飯づくりが始まった。スターター(前菜)は、昼に釣ったブラウン。小麦粉を軽くまぶしてグリルしたブラウンを、カナッペ風に切ったトーストの上に載せ、レモン、胡椒、塩を少し加えて食べる。おいしい。とてもおいしい。今までヤマメ、イワナ、レインボーなどの鱒を食べてきたが、こんなにおいしい鱒は初めてだ。ロジャーと分け合って、あっという間に食べてしまった。

ロジャーによれば、同じブラウンでも湖と川では味が違うという。湖のは少し泥臭いが、川のは餌がいいので味もいいそうだ。川で捌いたときに胃袋の中を見たら、川虫の他に小さなカワニナのようなものがたくさん入っていた。それがこの味の秘密らしい。

Roger baking

今日はクリスマスということで、ステーキが主菜。薪ストーブの中に金網で挟んだステーキをかざして焼き始める。ストーブのぬくもりとともに、肉を焼くいい匂いがケビンの中に広がっていく。オニオンとマッシュルームを付け合わせにしての豪華ディナーだ。私は飲めないのでコーヒーで、ロジャーは地元産のワインをグラスに満たし、クリスマスに乾杯した。

Great dinner

シャワーも3回目なので、かなり上手に使えるようになった。明日は早く起きなくては、と思う間もなく眠りに落ちていった。

●12月26日

レイクリバー

6時10分起床。7時30分出発。ロジャーは昨日までの場所なら近いから釣る時間が長いが、別の場所はちょっと遠くなるから釣る時間が短くなる、どちらがいいかと聞いてきた。昨日釣れた場所も魅力的だが、できれば色々な所を見たいから新しい場所で釣りたいと申し出る。

昼食は帰ってから、ということで車はあわただしくケビンを出発した。途中、麓の町の小さなガソリンスタンドで給油。本当は昨日のうちに給油したかったのだが、クリスマス休暇でどこのスタンドも休業中だったのだ。

レイクリバーは最高だった。ロジャーが作ったグラスホッパーが大当たりで、釣り始めるとすぐにFish on ! ライズはないものの、ロジャーが示す、木の下、バンクの縁、流れのたるみにフライを流すと何回かに1回は当たりがある。プレゼンテーション次第という訳だが、ロジャーがいうには、私のキャスティングが日に日にうまくなってきている。だから、ここぞという場所に正しく振り込めるようになったから釣れるんだ、そうだ。私には、ここが魚影の濃い川だからという気持ちがあるが、確かに初日に比べれば、かなり堂々としてきた気がする。

Fish on!

うまくなった、というより、最初は勝手が分からずにおずおずやっていたものが、だんだん要領が分かってきたからだと思うのだが、誉められれば悪い気はしない。しかし、一投毎に「グッド」とか「ナイス」とか言われると、緊張してしまう。

キャストの評価は、「ーーー」→「グッド」→「ベター」→「エクセレント」→「ラブリー」となるようだ。ひたすら「ラブリー」を聞きたくて頑張ることになる。

釣果に恵まれて

お昼までの僅かな時間で、30センチから40センチくらいのブラウンを7尾釣ることができた。川を覆うような木の下や岸すれすれの所といったフライを振り込むのに気合いがいる場所、これは日本の渓流で岩魚を狙うときと同じで、大物が潜む場所だ。大物は開かれた場所ではなく、自分にとって最もリスクの少ない、逃げ込む場所があるところの近くで木の枝から、あるいは岸の上から落ちてくる虫を辛抱強く待っている。

Brown trout

今夜はケビンでの夕食はないから、魚はすべてキャッチアンドリリース。

コーヒーブレイク

ロジャーのコーヒーブレイクの誘いを受けて、今回のタスマニアのブラウン釣りは終了した。初めてのオーストラリアでの釣り。日本では餌釣りの片手間にフライというのが常だっだが、最初から最後までフライフィッシングというのも初めての経験だった。ブラウンは平成8年にカナダのボウ川で釣りをして以来だった。

車を止めた所まで戻り、ディレクターチェアーに座りながらロジャーの入れてくれたコーヒーを飲んだ。日本ではあまり飲まないインスタントコーヒーだが、タスマニアの風景を見ながら、今までの釣りを振り返りながら飲む味は格別だった。

今頃アラスカでは、ぶ厚い氷に穴をあけてヒメマスを狙うアイスフィッシングが始まった頃だろう。零下10度、20度の中で凍えながらする釣りもあれば、こうして夏の風に吹かれながら、コーヒーを片手にする釣りもある。釣りはやめられない。

午後2時にケビンに戻り、ロジャーが昼食を作っている間に帰国の荷造り。帰国したら、その足で職場に向かうことを念頭に、ワイシャツやネクタイを出しやすいところにしまう。髭も剃っておこう。いつもなら出勤の準備は憂鬱なものだが、釣り旅行から直接職場に行くのは初めての体験なので、不思議に淡々と手が動く。釣り道具はほとんど借りたので、自分の荷物は衣類だけで、すぐに荷造りは終わった。

帰路へ

ロジャーがトーストとミートローフ、コーヒーなどを用意してくれ、二人で食べた。私の次にケビンに泊まる客はいないようで、食事が済んだロジャーはケビンの中の片づけを始めた。もともとまめな性格のようで、てきぱきと片付けていく。

ホバート空港へ

窓に鍵をかけ、さらに鉄の格子戸を閉めて鍵をかける。滞在中に出たゴミは車の荷台に載せた。 午後3時10分、予定より少し早いが出発した。ホバート空港までは約1時間かかる。私はタスマニアの風景を目に焼き付けようと車窓から外を見ていた。

来る前までの私の想像ではもっと未開の地かと思っていたが、それはまったくの勉強不足で、平野部のほとんどは牧畜のための草原になっている。自然が残っているのは島の西北部、ハイランドと呼ばれている地域で、そこには標高1500メートル級の山々が連なり、山上湖が点在している。湖にはレインボートラウトが住んでいる。そこにいくには、何時間もかけて車でいくしかなく、キャンプを覚悟しなくてはならない。

ローンチェストンに泊まれば日帰りも可能だが、ローンチェストンはメルボルンからは便利だが、シドニーからの便が悪い。いずれにしても短い休暇の釣り人には無理な相談だ。

Airport

ホバート空港でロジャーと別れ、シドニーまでのジェットスター航空にチェックインした。ロジャーは、クリスマスに仕事(私のガイド)で母親に会えなかったのが寂しかったらしく、一刻も早くホバートにある自宅に戻りたかったのだろう。私を降ろすと早々に引き上げていった。そういえば、釣り場でのコーヒーブレイクのときに、何回も母親に携帯で電話をしていた。

早く着いたおかげで、搭乗時間までには時間がたっぷりあったので、空港の周囲を散歩する。しかし、空港内にも空港の回りにも店らしい店もなく、駐車場の車を見ていてもしょうがないので、空港の待合室に戻る。仕事で来ているらしい日本人の中年カップルがいたが、声をかける気にもなれず、コーヒーを買って飲みながら待つことにした。

機内は座席指定もなく、空からタスマニアの風景を見ようと窓側の席を見つけて座った。機内で2.5ドルのコーラを買い、飲みながら景色を楽しんだ。やはり平野部は牧草地が広がり、遠くには山々が連綿と連なっている。あの山のどこかに湖があり、魚が住んでいるのだ。またいつか会いに行こうかな。

Good bye Tasmania

シドニー空港

19時15分、予定より15分早くシドニーに到着。シドニーでは、飛行機は国内線専用の第2ターミナルにつく。国際線は第1ターミナルで、そこへは第3ターミナルからしか行くことができない。だから第2から第3に移動し、さらに第1に行くのだが、カンタス航空のホームページでは第2ターミナルから第3ターミナルには連絡通路の動く歩道で移動できることになっていたのだが、この連絡通路が見あたらない。空港職員に聞いてもよく分からない。第3ターミナルへの案内標識を頼りに歩いていると、いつの間にか外に出てしまった。

第2ターミナルの向かいのビルが第3ターミナルということは知っていたから、とにかく向かい側のビルにスーツケースをころがしながら歩く。やはりこのビルが第3ターミナルだった。2階にあがり、カンタス航空の国際線チェックインカウンターを探すが、これまたなかなか見つからない。ここでチェックインできないと、第1ターミナルまで延々とスーツケースを持って行かなくてはならない。係員に聞き、一番奥のカウンターだと教えられ、無事チェックインが済む。 シドニー空港の国際線専用ターミナルは第1ターミナルで、日本への便もそこから出発する。

第3ターミナルから第1ターミナルへは、市営の地下鉄か空港の連絡シャトルバスに乗らなくてはならない。バスは無料なのでこれに乗る。第1ターミナルで出国審査を受け、ボディチェックの後、ようやく待合室に辿り着いた。

オーストラリアを後に

待合室の乗客の半分以上は日本人。それも小学生や中学生、高校の団体がいくつもいて、それにパックツアーの団体が加わる。中年の御一行は、皆一様に手に免税店の手提げ袋を持っている。子どもたちは子どもたちで床にうんこ座りして、携帯電話、ビデオなど先進国のシンボルをキラつかせながら騒いでいる。旅行気分が一気に吹き飛ぶ瞬間だ。日本人は金持ちなんだなぁ。

22時20分、飛行機はほぼ予定通りシドニー空港から離陸し、一路日本へ向かった。私の座席は行きも帰りも34G。リクエスト通りの席が取れたことに感謝。機内食を食べ終えると、あとはひたすら眠る。少しでも多く寝ないと翌日の仕事に差し障るからだ。目隠し、空気枕、耳栓、マスクという安眠グッズで武装し、ひたすら寝ることにした。

それでも着陸の2時間前には目が覚めた。まぁ5時間は寝られたのでよしとしよう。少しすると朝食が配られた。何もしていなくても腹は空くもので、ペロリとたいらげる。毎回思うのだが、この機内食、お代わりができると聞いているので一度試してみたいのだが、なかなかできない。腹も身のうちという格言の前に、今だかつてやったことも見たこともない。

隣のロシアン美女

私の隣の席には、彫りの深い整った顔立ちの女性が座っている。もう眠る必要もないからと話しかけた。聞けば21才のロシア人で、大学で国際法を勉強しているという。冬休みを利用してロシアの実家に帰る途中で、日本で乗り換え、ドイツで乗り換えての長い旅路ということだった。 とてもきれいな英語で、強烈なオーストラリアなまりの英語に苦しんでいた私には、とても新鮮に感じられて会話が途切れることはなかった。オーストラリアでの生活から少子高齢化、地球温暖化問題まで、幅広くかつ無責任な会話を楽しむことができた。

豊かとは言えないロシアで娘を海外留学させるくらいだから、ロシアでは金持ちの家の娘なのだろう。成田では名前も聞かずに別れたが、その清楚さとともに新鮮な感動を味わった。

●12月27日

   飛行機は予定通り、朝の6時10分に成田に到着した。スーツケースからワイシャツとネクタイ、フリースの上着を取り出して着替え、荷物は空港宅急便に預けた。さぁ、出勤だ。

後記

今回の釣行はほとんど予定通りだったが、大きな誤算が一つあった。それは花粉症のことだ。日本では10月頃一時流行りだしたが、寒波の到来とともに減少した。でもオーストラリアは春の終わりから夏に入るところ。オーストラリアの花粉症は、杉花粉によるものではなくブタ草などの草の花粉による花粉症で、日本と同じようにたくさんの被害者がいる。

英語で花粉症をHay feverというが、Hayは干し草という意味。人間の数より羊の数の方が多いこの国では、その餌になる牧草が至る所に大量に生えている。花粉の中に顔を突っ込んでいるようなもので、滞在2日目からアレルギー反応が出始め、釣りに集中することを邪魔し続けた。 衣類は季節を考えて色々用意して行ったが、花粉症まで気が回らなかった。これを大いに教訓としたいと思う。

Smoking at the Lake River

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